来年の日本移民110周年事業の検討を進めるサンパウロ州の実行委員会では、国士舘スポーツセンター(サンパウロ州サンロッケ市)の改修を記念事業とすることが濃厚となってきている。委員長を務める菊地義治さん自らが立案したもので、特に反対意見は出ていないという。今回の節目を第1期改修と銘打って、行く行くはサンパウロ市コロニア全体で有効活用できる大型施設にしたい意向だ。
先月24日昼に行なわれた援協役員会で菊地委員長が明かした。「記念事業の予算は300万レアル(約1億円)と見込む。その内100万レを国士舘改修に充てたい」と語った。
2015年の日伯外交120周年の記念事業総額が200万レだったから、それより多い。文協が管理する万年赤字運営の物件を、何とか収益のとれる施設にしたいとの思いだ。
6千家族以上の会員数を誇るといわれる日本カントリークラブを引き合いに、「あそこも昔は遠いと言われ、野原だった。でも今では週末にたくさんの人が集まる。道が整備されアクセスも良くなった」と説明。サンロッケへの交通も、10年後にはもっと良くなると見通している。
「交流年の記念事業として形に残るものを」との気持ちも強い。本人も援協会長のころから、移民80周年時に開業した日伯友好病院に恩恵を感じていたことも要因の一つとなった。
「今回を第1期とし、第2、第3と続ける。サンパウロ市コロニアに欠けている自前の大型イベント施設が完成すれば、県連日本祭りだってでき、高額な賃料を払わずに済む。いずれはそこに皇室をお迎えできる」。
第1期ではパビリオンを建設予定。地元の農産、物産展をできるようなスペース確保を最優先とし、早速活用したい意向だ。
管理する文協にとってもありがたい話。木多喜八郎前会長時代には『エコロジーパーク構想』が華々しく発表されたが、計画は進展していない。文協内部から「お金を集められるなら、ぜひやってほしい」との声もあるが、文協評議員会の承認が必要という。完成理想図も話し合いを重ね決定していく。
実現に向け菊地委員長は、「まずは明快なプロジェクトの作成が必要。それを日本側でも売り込み、助けを得たい」。事業費獲得は「援協会長時代の人脈を生かし、日本側でも求める」としている。
現在は、脇を固める事務局の人員を探している最中で、体制が固まり次第、実行委員会を正式発足させたい考えだ。
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かつて『エコロジーパーク構想』のような国士舘スポーツセンターを使った大型計画はかつてあったが、最大の難点が「資金集め」と「環境関係の許認可」だったとか。木を一本切るのでも環境関係のフィスカルの目が厳しく、駐車場を作るために木を倒しただけで関係者は大変な緊張を強いられたらしい。まして大型パビリオンを作るのであれば、大量に木を切る必要があり、許認可申請が大変では―と心配する声も。菊地さんの粘り腰で、この辺も解決できるか。