「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」―。これは、アルバート・アインシュタインが残した名言だ▼世の中の基準なら、事業に成功し、巨額な富を得た人が成功者かもしれない。だが、何かあった時、多くの人が駆けつけて涙したり、感謝したりする人は、周りの人達に愛や励まし、感動、勇気などを与え続けてきた人だろう▼そういう意味で、4日に亡くなられたヒラノ・イツコさんは、価値ある人の一人に違いない。モジ・ダス・クルーゼス市在住という事もあり、最後にお見受けしたのは1月29日に同市で行われた紅白歌合戦だった。全体の動きに目を配り、台所と会場の間を行き来するのみならず、大会の最後に配る餅の準備も彼女の責任だったと聞く。各種の大会で司会も務める娘のマユミさん、孫のヒカルさんまで3代続く歌上手でもある▼コラム子にとっては、2年位前にサンパウロ市リベルダーデ区で開かれたカラオケ大会で「これから孫が歌うの」とそわそわしていたのを見たのが、母、娘、孫という関係を知った最初だった。だが、以前から彼女を知る人は、歌は上手いし料理上手、すばらしい母であり祖母、縁の下の力持ち等々の賛辞を惜しまない▼歌い手としての名声や料理の腕前は彼女の努力の賜物かもしれない。だが、多くの賛辞は彼女が文協(文化協会)などの活動に積極的に関わり、与えてきたものを見た人々が与えた評価だ。残念ながら、個人的な交わりはほとんどなく、人となりも余り知らない。だが、多くの人がその死を惜しみ、「これからはあそこに行っても彼女には会えないんだね」などと言う言葉に、人柄が偲ばれる。今は安らかな眠りと遺族への慰めを祈るのみだ。(み)