ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 《ブラジル》社会保障制度改革=強固な議会の反対に政府が譲歩?=5項目で条件緩和か=大統領、YouTubeで国民に呼びかける=「骨子は揺るがない」と報告官

《ブラジル》社会保障制度改革=強固な議会の反対に政府が譲歩?=5項目で条件緩和か=大統領、YouTubeで国民に呼びかける=「骨子は揺るがない」と報告官

テメル大統領(Marcos Corrêa/PR)

テメル大統領(Marcos Corrêa/PR)

 【既報関連】ミシェル・テメル大統領は、下院の社会保障制度改革特別委員会の報告官、アルトゥル・マイア下議(社会民衆党・PPS)に、政府の提出した年金制度改革案に変更を加えることを許可したと7日付現地紙が報じた。

 6日付現地紙による、「政府の社会保障制度改革案に賛成の下議は95人、反対の下議は251人」の報道は現政権内にも大きなショックを与えた。テメル大統領は同日夜に、YouTubeに社会保障改革の趣旨と必要性を訴える動画を投稿し、「年金システムは国家財政の大きな負担となっており、改革は急務だし、国民全体の義務だ。改革を成し遂げることで経済は成長し、新たな雇用も作られる」と訴えた。
 報告官のアルトゥル・マイア下議も同日、テメル大統領、エンリケ・メイレレス財相、エリゼウ・パジーリャ官房長官、マルセロ・カエターノ社会保障局長と協議した後、政府草案に五つの変更を加えることを発表した。
 変更点は以下の通り。
 (1)農牧畜業従事者はこれまで、15年以上農牧畜業を行っていれば、正規の年金(INSS)を支払っていなくても男性は60歳、女性は55歳から年金が受給できていた。政府改正案はこれを、受給開始は他の職種同様に65歳以上とし、25年以上のINSS支払いを義務付けていた。それを緩和する。
 (2)これまで、65歳以上の高齢者や、家族1人当たりの収入が最低賃金の4分の1(234・25レアル)以下の身障者に支払われていた高齢者・身障者恩給(BPC)の支給条件を、政府改革案は70歳以上で、所得条件を撤廃するというものだった。これも見直される可能性がある。
 (3)配偶者が亡くなった人に支給される遺族年金はこれまで、法定最低賃金を下回る事がなかったが、改正案はその最低額を引き下げ、年金受給者が遺族年金を受け取ることも禁じていた。しかし、一定額までは年金受給者も受け取れて、最低賃金分は保障される可能性がでてきた。
 (4)他の職種に比べ年金受給開始年齢が若いという、警察官と教師の特権を政府は廃止しようとしていたが、従来通りになる可能性がある。
 (5)政府案の移行措置では、50歳以上の男性と45歳以上の女性は、現行システムで必要な年金負担年数の残りに1・5をかけた年数の負担を求めるとしていた。その対象年齢が引き下げられる可能性がある。
 ただし、年金受給開始年齢を原則65歳とする点は維持される。政府は年金制度改革により、今後10年間で6780億レアルの支出削減を行う意向だったが、今回の変更で削減額は1152億6千万レアル減る見込みだ。社会保障省の赤字は増える一方で、今年の赤字額は1800億レアルを超える見込みだ。
 アルトゥル・マイア報告官は「政府案の変更を行ったとしても、その骨子が脅かされることはない」と語っている。