ブラジルが誇る名司会者にして、国内第2位の民放局SBTの会長でもあるシウヴィオ・サントスが、番組放送中に、局の顔である女性キャスターのラケル・シェへラザーデと、深夜トーク番組の人気司会者のダニーロ・ジェンチリに、政治的発言に関して釘をさした。
その瞬間は9日夜、SBTで生放送された「マスコミ・アワード(トロフェウ・インプレーザ)」の授賞式で起こった。この番組はシウヴィオの司会で行われたが、そこで彼は、「インターネット・ジャーナリスト賞」の受賞者として、シェへラザーデを紹介した。
シェへラザーデは同局の夜のニュース番組のメイン・キャスターで、かなり福音派寄りで、保守的な意見の持ち主であることで知られている。とりわけ、自身のツイッターなどを通じ、左翼の労働者党に厳しい意見を繰り返し流し、ジウマ大統領罷免前後に人気を獲得していた。
シェへラザーデはこの夜、レッドカーペットを歩くかのような紺のガウンにドレスアップして登場したが、彼女を迎えたシウヴィオは、笑顔と笑いで冗談めかしながらも彼女を軽くたしなめた。それに対しシェへラザーデは「でも、私がこの局に呼ばれた(彼女は地方局での実績で全国局に呼ばれている)のは、意見を言うためでは」と反論した。
すると、シウヴィオは「そんなことのためには呼んでいないよ。君は美人だし、声もいい。それをいかしてニュースを読んで欲しいんだ」と言い切った。さらに、「もし君が今のスタイルを続けるのなら、自分の資産でテレビ局を買ってからにしてくれ」と、司会車兼テレビ局運営者である自分を茶化しながら、さとした。
シウヴィオはさらに、「君とダニーロ(・ジェンチレ)は、もっと政治家にお手柔らかに頼むよ」とも言った。
ダニーロの看板番組である深夜のトークショー「ザ・ノイテ」は、深夜時間帯ではグローボの同系の老舗番組「プログラマ・ド・ジョー」を抜いて最高視聴率になっている。いわば、彼は局の顔だが、彼も反労働者党の意見を強く言い、「政治家なんて信用できない」と発言していた。
公の場で局の経営者がここまで報道規制を強いる例も珍しいが、国内随一の富豪で、視聴率でもトップのグローボとの差を縮めている状況の中、政治的なことで経営上の足を引っ張られるのに難色を示したのだろう。
加えて、SBTが極右イメージを持たれるのを避けたかった、ということも考えられる。シェへラザーデはすでに保守派の支持を得たキャスターとして有名だ。また、ダニーロの番組でも、極右の大統領候補と目されるジャイール・ボルソナロ氏をゲストに招いた放送回が話題になって間もないタイミングでもあった。
なお、シウヴィオ自身も、大統領選に出馬した経験がある。それは、軍政から民主制に戻った後に初めて行われた1989年の大統領選で、当時すでに司会者、SBT経営者として成功していた彼は、小政党で立候補しようとしていたが、それを旧軍政党の残党だった自由前線党が鞍替えさせようとしたことが選挙法違反に問われ、出馬できなかった。(10日付フォーリャ紙サイトより)