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サンパウロ西部=カラフルな壁画で有名な地域の住民が抗議で壁画を塗りつぶす=騒音やトラブルに困っていると訴える=治安改善を約束した行政

サンパウロ市の小さな一角、ベコ・ド・バットマン。壁や塀には随所にグラフィックアートが施されている。(Wander Roberto/ inovafoto)

サンパウロ市の小さな一角、ベコ・ド・バットマン。壁や塀には随所にグラフィックアートが施されている。(Wander Roberto/ inovafoto)

 サンパウロ市西部のヴィラ・マダレーナ地区は、市内でも有数の歓楽街であると共に、アーティストやミュージシャンなどが好んで住み、ボヘミアンな雰囲気を持つ街だ。

 この街の一角でベコ・ド・バットマン(バットマンの路地裏)と呼ばれる小道は、民家の壁や塀にもグラフィックアートが描かれ、サンパウロの観光名所となっている。休日ともなれば多くの若者が集まり、街と共存しているアートを眺めたり、アートを背景に写真を撮ったり、小広場で音楽を演奏したりと、思い思いに楽しんでいる。

 評判を聞きつけ、国外からここを目当てにサンパウロを訪れる人もいるほどだ。

 そんな街を住民も誇りに思ってきたが、夜中まで騒ぐ人が出て、安眠の妨げになるなど、同地区を訪れる人々のマナーの悪さに我慢も限界に達して、グラフィックアートが描かれていた自宅の塀を灰色に塗りつぶす人が現れた。

 壁に灰色のペンキを塗ったのはジョアン・バチスタさんだ。同氏は、「夜中まで騒がれるし、酔っ払いも出る。警察を呼んでも来やしない」と語り、「夜中の騒音や観光客とのトラブルに辟易している」と語った。

 彼は20年前、自宅の壁に壁画アートを書くことを許可した。彼は壁画を気に入っており、その保存も援助してきた。

 バチスタさんの家の塀に絵を描いた壁画画家のビーニョ・リベイロさんは、「この地区の行政担当者はここに来る観光客のことばかり考えて、住民の事はほったらかし。これではいけない」と語り、バチスタさんの抗議に理解を示している。

 近隣住民のアンドレ・キルケリスさんも、「これはこの地区に来る人々の教育レベルの問題だ。地元住民の事を顧みないのは人間性の欠如だ」と語った。

 だが、こうした理解を示す人は少なく、灰色に塗られたバチスタさんの家の塀にはあっという間に、壁画を消した事に抗議する落書きが書き加えられた。

 同地区行政を管轄するピニェイロス区役所のパウロ・マティアス区長は事態を重く見、24時間以内にメッセージビデオを作成。「私はベコ・ド・バットマンに70年も住むバチスタさんと共にいます。バチスタさんとお話をさせていただきました。バチスタさんも壁画自体には理解を示してくれており、もう一度壁画を描いても良いといってくれています」と呼びかけた。

 同区長はビデオの最後で、同地域の監視を強化し、夜間照明も取り付けることを明言した。(11日付G1サイトより)