9日、ブラジルのサッカーの試合に、刑が確定する前の殺人犯が試合に出場するという、全世界的に見ても前代未聞の事態が起こった。
その選手、ブルーノ・フェルナンデス・デ・ソウザ、通称ブルーノは、2010年7月、当時、名門フラメンゴの正ゴールキーパー時代に、殺し屋を雇って恋人だったエリザ・サムジオさんのバラバラ殺人を指揮した容疑で逮捕された。
当時、ブルーノはフラメンゴの選手として200試合以上の出場を果たしており、セレソン入りも近い選手と目されていただけに、大きな話題を呼んだ。
ブルーノは2013年4月に殺人罪で22年の実刑判決を受けた。
ブルーノは上告し、次の裁判を待った。だが、その裁判の日取りがなかなか決まらなかったため、2017年2月に最高裁のマルコ・アウレーリオ・メロ判事が、次の裁判が決まるまで、人身保護令を適用した。つまり、次回裁判の前まで、釈放となったのだ。
この判断は、1994~95年に全世界を震撼させた、元アメリカン・フットボールの名選手の殺人容疑逮捕から予想外の無罪となった事件になぞらえて、「ブラジルのOJシンプソン」とまで称された。
ブルーノは釈放されたとはいえ、22年の実刑判決を覆すようなことがあるわけでもなかった。だが、そんなブルーノに入団を呼びかけ、契約したチームがある。それがボア・エスポルチだ。
ボア・エスポルチはミナス・ジェライス州で70年の歴史を誇るチームで、全国選手権では2部に所属する、それなりの戦力を持ったチームだ。昨年は3部で優勝も飾っており、念願の1部昇格に向け、ブランクがあるとはいえ、まだ33歳で、かつては評価も高かったブルーノに白羽の矢を立てた。
この契約は物議を醸し、ボアはブルーノ契約と共に、チームのスポンサー契約を4社失うという高い代償を払うこととなった。
そして9日、ブルーノは2499日ぶりにフィールドに立った。試合に出場したのは2010年6月5日の全国選手権、対ゴイアス戦以来。9日の試合は、ミナス・ジェライス州選手権第2部の決勝リーグ、対ウベラーバ戦だ。
この試合、本拠地のヴァルジーニャ市民スタジアムには1722人のファンがつめかけた。ブルーノは試合前の選手発表の際に歓声も受けた。
試合は前半はボアが1点リードしていたが、後半8分、ブルーノ自身がゴール前で相手選手を倒してしまったことでファウルを取られ、そこでのPKで1点を失い、引き分けた。
「誰にでも更生するチャンスは残されている」と自ら語るブルーノだが、今後はいかに。(8日付オ・グローボサイトなどより)