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《ブラジル》移民法が上院を通過=テメル大統領の裁可待ちへ

18日の上院議会の様子(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

18日の上院議会の様子(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

 ブラジル連邦上院議会は18日、賛成43票、反対4票、棄権1で、新移民法(昨年12月9日付本紙では「移民法改定案」と表記)を承認した。今後ミシェル・テメル大統領の裁可を待つ。

 同法はブラジル国内への移民と、訪問者の義務と権利を定め、入国、滞在の規定を確立すると共に、外国人に関する公共政策上の原則と指針を制定したものだ。

 同法では、移民たちにもブラジル国民同様、不可侵の生存権、自由、平等、安全、医療教育などの公共サービスを享受する権利が保障される。

 また、正規の登録さえすれば、社会保障を受ける権利、労働市場に参加する権利も同様に保障される。また、ブラジル国籍者に限定された職種以外なら、公務員に応募することもできる。

 新移民法では、不法入国増加の要因ともなる人身売買を犯罪と定め、その罰則を、最低2年から最高5年までの禁固刑と罰金と定めた。不法に連れてこられた人、連れて行かれた人に対する暴行があった場合、罪はさらに重くなる。

 また、出身国で生命の危険にさらされたり、危害を受けたりする危険がある場合、ブラジルから国外追放してはならないとも定めている。

 同法案の原案は最初に上院で審議され、下院に回されたが、下院で承認する際に修正が加えられたため、上院に戻っていた。2度目の上院審議では、多くの変更はなかったが、同法案の報告官、タッソ・ジェレイサッチ上議は、いくつかの調整を加えた。

 同上議は「労働市場を移民に対して、閉鎖すべきではない。移民はむしろ成長要因だ」として、国内労働市場を移民に対して制限する部分を含んだ条項を削除した。

 移民法はいくつかの点で、上院議員の間で論争の種となった。その一つで、ロナウド・カイアード上議(民主党・DEM)が批判したのは、ブラジル国内に居住する先住民に対し、彼らの部族が伝統的に専有してきた地域内の移動の自由を保障する項目だ。条文では、専有地域が国境をまたいでいても、先住民の移動を制限していない。

 カイアード上議は、これを認めると、ブラジルの国境防衛を弱体化させ、ベネズエラ、コロンビア、パラグアイなどからの麻薬の流入を容易にしてしまうと批判した。

 ジェレイサッチ報告官は、先住民の権利は憲法で保障されており、移民法の該当条項の目的は、そもそも後発である西洋から来た白人が後から決めた国境のことなどあずかり知らない人々の移動の自由を保障する事だと釈明した。同報告官は、先住民は、狩りや漁などのために移動する際に、種々の制約を受けてはならないとした。(18日付アジェンシア・ブラジルより)