ブラジルの調査機関、IT・コミュニケーション技術研究センター(Cetic)によると、ブラジルでは11歳~17歳の青少年の10人に1人がインターネットで自傷行為を示唆する内容、20人に1人は自殺行為を示唆する内容に触れていると、20日付エスタード紙が報じた。
19日にはサンパウロ州バウルー市で、17歳の青年が「クジラのせいだ」とインターネットに書き込んだ後、投身自殺を図る事件が発生した。
これは、インターネットを介して急速に青少年たちに広まっている、〃シロナガスクジラ〃ゲーム(Baleia Azul)だ。ゲーム開始時は、「一日中ホラー映画を見る」「4時20分に起きる」「指定された特定の音楽だけを聴く」という指令が出される。
50項目にのぼる指令は、「腕と足にナイフなどでクジラの形を刻む」などの自傷行為に変化していき、最後は「自殺する」で結ばれる。精神的に未成熟な青少年の劣等感や優越感を巧みに刺激しながら洗脳し、自殺させてしまうのだ。
同件に関する警戒は既に、サンパウロ州、パラナ州、ミナス州、マット・グロッソ州、ペルナンブッコ州、パライバ州、リオ州、サンタカタリーナ州の8州の警察や医療関係者に広まっている。
このゲームに巻き込まれた子供が最も多いのはパライバ州で、警察は20人が関わったことをつかんでいる。
このゲームは2015年にロシアで始まったとされ、スペインやフランスなどでも社会問題化している。ゲーム名の由来は、シロナガスクジラが死に場所を求めて海をさまよい、最後は海岸に乗り上げて自殺するという伝承に基づいている。
ブラジルでもこの問題は既に顕在化しており、バウルー市の件以外にも、先週はジャウー市で、13歳の男の子が自殺を図った。母親が事件の翌日、少年のパソコンを見て、このゲームに巻き込まれていたことを知った。
パラナ州クリチーバ市では、19日の未明に13歳から17歳の男女合わせて8人が自殺を試みた。ワグネル・メスキータ同州保安局長は、1人がゲームへの関与を明かしたと語った。
同局長は「他の州とも協力してこの事件の犯人を捜し、自殺教唆罪に問う」としている。
ペルナンブッコ州連警は事件への注意を呼びかけるビデオを作製。18日には学校を回って注意を呼びかけるチームも結成した。
マット・グロッソ州では、15日前に起きた、シロナガスクジラゲームが原因と推測される16歳の少女の死について捜査中だ。軍警は約350人が加わっている同ゲームのグループを発見している。
ブラジル心理学者協会(ABP)自殺防止委員のアレシャンドリーナ・メレイロ氏は、「思春期の子供を持つ親は、子供の振る舞い(特に夜間の)や、衣類の変化に注意する事が必要。また異変を感じても、勝手に子供の物をのぞき見たり、一方的に責めたりしてはいけない。対話を保つ事が重要。信頼があれば子供は心を開く」としている。