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《ブラジル》汚職文化は政治家だけか?

チリリッカの公開声明文を報じるサイト

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 改心した悪党が真情を吐露した言葉には、妙な説得力がある――。オデブレヒト社(以下O社)のエミリオ前社長が怒涛の暴露をする司法取引証言の映像を見ながら、メンサロンを最初に内部告発したPTB党首ロベルト・ジェフェルソン氏に近いものを感じた▼前々回の樹海コラムで、エミリオ氏の「政治家の汚職は一種の『制度』だ。30年前から同じことをやってきた」との証言を紹介したが、実はその続きがある。彼いわく「だいだいマスコミもおかしい。奴らはこの仕組みを昔から知っていた。なぜ今になって大騒ぎをしているのか。問題だと告発するなら、どうして10年前、15年、20年前に騒がなかったのか。この仕組みは30年に作られたのだ」というもの▼コラム子が知る限り、グローボ局などのニュースでは、この部分は削除されている。彼は「どうして俺たちばかりを告発するんだ。マスコミだって同罪だろ。ヤツらばかり良いカッコしやがって」といわんばかりだ。ラヴァ・ジャット作戦で「悪の権化」のように扱われているO社にしてみれば、他も巻き込みたくなる▼マスコミが扱わない、もう一つの側面がある。政治家が受け取った賄賂が、なにに使われているかだ。もちろん豪遊や超高級車、宝石、豪邸、別荘などの購入など個人的な使い道の部分は報道されている。だが一番の使途は、実は「選挙資金」だ。それがどう使われているかが明らかではない▼過去の選挙期間中、地方の政治家や補佐官らと話す機会が幾度もあった。彼らは口をそろえて「いくらお金があっても足りない」とぼやいていた。サンパウロ市ではムリだが、田舎ではけっこう本音を教えてくれる。「何に使うの?」と興味津々で某市議に聞いたら、「選挙期間中になると近所の住民が電話代、水道代、インターネット代とかの支払伝票を2、3カ月もためて、俺の家に持ってきて目の前でヒラヒラするんだ。払ったら票を入れてやるってね」と言われ、開いた口がふさがらなかった▼別の地方の市スポーツ局長の日系妻は「選挙期間中は毎朝、近所の住民が電気代とかの銀行振り込み票をもって、うちの前に列を作っているのよ。毎朝よ。当選するには、それに従わないと仕方ないの。それが良いことじゃないと政治家も分かっているわよ。でも、政治家がそれを批判するのは『当選したくありません』と言っているのと同じ」と嘆いた▼それを聞いて「そういう選挙民が、ああいう政治家を選んでいるのだ」と確信した。有権者は「政治家に払ってもらってもうけた」と思っているが、そのお金は自分が払った税金から周り巡っていることを理解できていない。そんな層がたくさんいるから「汚職は文化」なのだ。政治家だけの問題ではない▼14日にあのチリリッカが公開声明文を発表した。サーカスのピエロとして有名になり、有権者からの「どうせ議会は道化モノの集まりだ」という抗議票を一身に受け、2010年選挙最多の134万票を得て当選した連邦下議だ。他の議員から大得票を羨ましがられ、「半文盲」とイジメられた。この手紙は、無名のサーカス団時代の実話だ。41人もの団員がいるのに、1日の入場料収入が32レアルしかなかった。その時、仲間の一人が病気で薬代に50レアルかかるので、全額を彼に与え、さらに薬局に掛け合って足りない分を後払いにしたという美談だ▼それに比べて政界はヒドイと憤慨し「金の亡者ばかり。右翼、左翼の問題じゃない。O社のリストの政治は両側に泥棒がいると証明した。来年の選挙では大掃除をすべき」と実に真っ当なことを書いている。本物のサーカスのピエロが超真面目に見えることで、連邦議会全体の不真面目さ、道化振りが引き立つ。このために彼は当選したのだ―と感じ入った。彼のような庶民層が汚職に怒り心頭という現実からは、来年の選挙では北東伯に大変化が起きる可能性、希望を感じた。(深)