ブラジルのサッカーシーズン前半のハイライト、各州選手権が大詰めを迎えている。
ブラジルは世界でもまれに見る、州別の大会と全国レベルの大会を別々に行う国だ。
分かりにくい方には、たとえば浦和レッズが同じ年にJリーグも戦いつつ、埼玉県選手権も戦うことを想像して欲しい。 全国26州の中でも特にステータスが高いのが、リオとサンパウロの2州の選手権だ。今年はこの二つの州選手権での決勝のカードが、例年以上に因縁深いものになった。
まずはリオ州選手権、カンピオナート・カリオカと呼ばれるこの大会の決勝は、共にリオ市を本拠とする人気チームの、フラメンゴとフルミネンセの間で行われる。
リオ市には、フラメンゴ、フルミネンセ、ヴァスコ・ダ・ガマとボタフォゴという、ビッグクラブと呼ばれるチームが四つある。
この4チーム間の対戦をクラシコと呼ぶが、最も伝統的な対戦カードがフラ・フルと呼ばれる、フラメンゴとフルミネンセの争いだ。ジーコやロマーリオなどの名選手も、この伝統のクラシコを彩ってきた。
対戦はホーム・アンド・アウェイ方式で行われ、どちらのホームゲームも会場はマラカナン。リオ五輪後の管理責任を巡る行政と企業の争いに巻き込まれ、一時は試合が行われる状態になかったが、3月からは急場しのぎの修復でビッグゲームに限り、試合が行われている。
両者の対戦は何度となく行われているが、リオ州選手権決勝がフラ・フルになるのは22年ぶりのこと。両チームのファンの盛り上がりは早くも加熱している。
サンパウロ州選手権、カンピオナート・パウリスタの決勝は、コリンチャンス対ポンチ・プレッタとなった。サンパウロ州でBIG4と呼ばれる強豪は、コリンチャンス、パルメイラス、サンパウロFC、サントスFCで、BIG4からは1チームしか決勝に残れなかったが、そのせいで盛り上がりに欠けるかもとの心配は無用だ。
コリンチャンス対ポンチ・プレッタの決勝は1977年にも実現していて、今も昔も庶民派の人気チーム、コリンチャンスは、その対戦に勝って優勝するまで23年間、主要タイトルなしの冬の時代が続いていた。その後、コリンチャンスは何度もブラジル全国選手権やリベルタドーレス杯、クラブW杯などを制覇しているが、古株のファンの間では未だに「1977年のパウリスタ制覇の喜びを超えるものはない」と語る人もいる。
1977年、79年のサンパウロ州選手権決勝でコリンチャンスに破れ、その後も1981、2008年と準優勝どまりのポンチ・プレッタは、知名度こそ高くないが、創立116年の名門だ。全国選手権でも州選手権でも1部の常連でありながら、主要タイトルに縁がない。
今回は、昨年の全国選手権の得点王で、今年のサンパウロ州選手権でも得点ランクトップのポッチケ(元ヴァンフォーレ甲府)の目覚しい活躍もあり、準々決勝でサントス、準決勝でパルメイラスと、名門を立て続けに降しているため、「コリンチャンスと互角、もしくはそれ以上」の前評判もたっている。 (規)