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《ブラジル》年金改革=下院委員会が意見書を審議=賛成23、反対14で本文承認=政府側は60%超えに安堵=刑務所職員は怒りの乱入

険しい表情のアルトゥール・マイア報告官(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

険しい表情のアルトゥール・マイア報告官(Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 【既報関連】ブラジル下院特別委員会は3日、8時間に及ぶ討議の末に、報告官のアルトゥール・マイア下議(社会民衆党・PPS)から提出された、年金制度改革を中心とする社会保障制度改革に関する意見書を賛成23票、反対14票で可決したと4日付現地紙が報じた。

 23対14という結果は、比率で見れば賛成62・1%で、下院本会議での承認条件である、議員定数の60%(308票)以上(ただし、この比率で2度の承認が必要)を目指す政府に一応の安堵をもたらした。
 だが、この数字は、委員会承認を目指す政府連立与党が、社会保障制度改革に反対する所属政党のメンバーを、改革に賛成する議員に入れ替えたりして獲得したものだ。野党側はこの措置を、抜け道、計略だと強く批判した。
 連立与党の社会党(PSB)、人権連帯党(PHS)、社会秩序共和党(PROS)、連帯は、所属議員に意見書に反対するよう指示していた。これらの政党の所属議員5人とブラジル労働党の1人が反対した事は、今後も与党内で激しい交渉が行われるであろう事を意味する。
 ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)は、委員会での意見書承認は、年金改革が至急の課題であるとの理解を示したものとの声明を発表し、委員会通過を喜んだ。
 昨年12月に政府が作成した草案は、「負担を全員で分かち合う」をモットーに、「年金受給開始は男女一律65歳から」「兵士、軍警、消防士を除き、労働者は全てこれに従う」というものだったが、教師、警察など様々な職種が、政権に圧力をかけ、例外的な特権を手にした。委員会で承認された意見書では、現行年金制度と改革後の制度の狭間の世代に対する移行措置も、最初の政府案から緩和された。
 これらの譲歩により、社会保障制度改革による歳出削減効果は24%減少したと、政府筋は話している。
 意見書に対する修正動議が相次ぎ、採決は紛糾した。また、警察官と同じ特別扱いを求める刑務所職員の乱入もあり、審議は数度にわたって中断した。
 刑務所職員らは2日から法務省庁舎を占拠し、警察官に対する恩恵を自分たちにも与えるよう要求していた。これを受けて、3日の委員会では、昼過ぎの時点では一旦、この主張を意見書に盛り込む事が決まったが、政府側の圧力を受けたマイア報告官が、あくまで特記事項として、本会議での審議扱いとする事に変更したため、それに怒った刑務所職員らは委員会に乱入。警備員や議会警察ともみ合いになり、催涙スプレーが使われる事態にまで発展した。
 特別委員会は9日に残りの修正動議を審議後、改革案を下院本会議に送る。大統領府は5月一杯の内部説得工作で、6月までには目標の308票を超える320票の賛成票を取りまとめる事を期待している。