ホーム | 連載 | 2017年 | 《ブラジル》県連故郷巡り=「承前啓後」 ポルト・ヴェーリョとパウマス | 《ブラジル》県連故郷巡り=「承前啓後」 ポルト・ヴェーリョとパウマス=(24)=新しい町だがもう厳しい競争

《ブラジル》県連故郷巡り=「承前啓後」 ポルト・ヴェーリョとパウマス=(24)=新しい町だがもう厳しい競争

川村勝さん

川村勝さん

 ガイドに「なぜ1985年から急に独立が進んだのか?」と尋ねると、「軍事政権中は、そんな動きはご法度に決まっている。誰も言い出せなかった。でも、85年に民政移管になり、急に活性化したんだ」という。
 軍事政権という重石が外れたとたん、もともと独立機運が強く、しかも国道開通で「体力」を付け始めていた地域が、勢いで名乗りを上げたという構図のようだ。
 だから、軍事政権に対抗する形で、PSDBが地盤を気づいた。ただし現在の州知事はPMDBだ。
 ガイドに「よく短期間にこんなに人口が増えたね」と感心してみせると、「とんでもない。計画上では100万人都市なんだ。それだけ受け入れる前提で、都市設計をしている。だから、今の人口じゃガラガラさ」という。
 おもえばブラジリアは当初「2000年時に50万人」の計画だったが、実際には250万人に急成長した。それにしても辺境の州都で最初から100万人構想とは稀有壮大だ。
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 リオ市から参加した川村勝さん(80、二世)は、「僕は旅行が趣味で、CVCとかブラジルの旅行社を使って国内外100カ所以上も行った。日本人と旅行すること自体、ほとんどなかった。でも故郷巡りは普通行かないような場所ばかり行くので、楽しみにしている。今回もそう。ロンドニアもパウマスも初めて、とても面白い」と感心していた。

中村伯毅さん

中村伯毅さん

 一行は、トカンチンス川の中州に船で行き、一部の人が上陸、水浴を楽しんだ。真っ先に泳いだ足立有基さん(ありもと、76、岐阜県)=グアルーリョス在住=は「水がぬるい」との感想。中村伯毅さん(ひろき、82、二世)が泳いでいる様子をほほ笑みながら見ていた妻の伯子さん(のりこ、78、二世)は「主人は80歳で水泳をおぼえた。それからどこに行っても泳ぐのよ」と笑った。
 田鎖満さん(78、岩手県)は「シジミがいっぱいいた。日本人がこの町にいっぱい住んでいたら、きっと毎日取りに来るね」と笑った。
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 3月20日(月)の夜は、地元のトカンチンス日伯文化協会との交流会が行われた。その会場で、8年前にパウマスに来たという岡谷忠さん(ただし、79、福岡県)に聞くと、「娘が産婦人科医で、元々はサンパウロ市のクリニカ病院で働いていた。医者をする夫がこっちで仕事をするというので、一緒に移った」とのこと。
 故郷巡りの松尾治福岡県人会元会長と会うなり、「おお、久しぶり!」と懐かしそうに抱き合った。岡谷さんはサンパウロ市では、福岡県人会の副会長をしていた。
 岡谷さんはサンパウロ州ジュンジャイーの近くのカブレウーバで農業をしていた経験から、パウマスを独自の視点で分析している。
 「ここでは二、三世が中心。資本を持って来て、最初から大きな企業農業をしないと続かない。最低1千、2千ヘクタールでしょう。この町はまだ人口が多くないから、商業の需要も大してない。まして工業は皆無といっていい。商業なんかは、元々パラナ州とかで大きくやっていた人が、資本を持って来て、最初からある程度大きく始めて、あとは町の成長と共に徐々に大きくしようと考えている感じです」。つまり資本ゼロでは数年も持たない。新しい町だが、厳しい競争がすでに始まっている。(つづく、深沢正雪記者)