【既報関連】「辞任はしない!繰り返す!辞任はしない!」―。これが17日午後7時半頃に、自らのクーニャ被告への口止め料支払い容認疑惑が暴露されたことで、ブラジル政界に激震が走って以来、ほとんど全てのスケジュールをキャンセルして執務室に篭った末、翌18日午後4時10分に、テメル大統領が記者会見で発した言葉だった。
疑惑発覚後、議会の機能停止、相次ぐデモ、株式市場ストップ安、高騰する米ドル、与党からの連立離脱の声、8件に及ぶ罷免請求、閣僚辞任、民主社会党(PSDB)党首アエシオ・ネーヴェス上議の職責一時停止と党首辞任、ファキン最高裁判事によるテメル大統領の捜査開始許可と、ブラジルは文字通り、蜂の巣をつついたような状態になった。
テメル大統領による声明の後、社会民衆党(PPS)とポデーモス(旧PTN・国家労働党)が連立離脱を表明した。PPSは9人の下議が、ポデーモスには13人の下議がおり、議会運営のために1議席でも多くの味方が必要な政府には痛手だ。
PPSのロベルト・フレイレ文化相は職を辞したが、PPSのもう一人の閣僚、ロベルト・ジュングマン国防相は職務の重要性から当面は職務に留まるとしている。
連立与党2番目の勢力であるPSDBは、テメル大統領の捜査妨害疑惑が証明されたら連立を去るとしている。同党のブルーノ・アラウージョ都市相は18日に辞任と報じられたが、同相はその後、他の閣僚らと話し合い、辞職を思いとどまっている。アロイジオ・ヌネス外相も含むPSDBの4閣僚の去就は、未だ流動的だ。
疑惑発覚後も、大統領公邸執務室内までテメル大統領と行動を共にしているロドリゴ・マイア下院議長を擁する民主党(DEM)は、ロナウド・カイアード上議が罷免請求に賛成していることを除けば、政府に忠実な党の一つだ。
サンパウロ市、リオ市、ブラジリア、ベロ・オリゾンテ市などでは18日もテメル大統領の辞任を求めるデモが発生。リオとブラジリアでは、デモ隊の一部が軍警と衝突した。
デモには野党労働者党(PT)支持の主要労組による、反与党の党派色の強いものから、政治家全般の汚職に倦み、「テメルもルーラもジウマもアエシオも、みんな捕まえろ!」と主張する団体や過激派のブラック・ブロックなどがある。
また、多くのデモで、現行憲法では不可能な、任期2年を過ぎてからの大統領選び直しの直接選挙実施を求める声さえも上がっている。大統領の辞任や罷免、当選無効に伴う直接選挙については、上院の憲政委員会に憲法補足案が提出されている。