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《ブラジル》テメル大統領が捜査中断要請取り下げる=捜査続行は不可避だと判断し=音声データは証拠不採用になると見越す=経済政策で〃加点〃を狙う

下院議長公邸で与党の下議たちと会合を持つテメル大統領(Alan Santos/PR)

下院議長公邸で与党の下議たちと会合を持つテメル大統領(Alan Santos/PR)

 【既報関連】17日の〃JBSショック〃以降、政権発足以来最大の危機に直面しているミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)が22日、20日に最高裁に提出した自身への捜査中断要請を取り下げたと23日付現地各紙が報じた。

 テメル大統領側が20日に行った要請は、JBS社主のジョエズレイ・バチスタ容疑者が報奨付供述で証拠として提出した、同容疑者とテメル大統領の会話を録音した音声データの鑑定が終わるまで、捜査を中断するというものだった。
 最高裁のカルメン・ルシア長官は22日午後、テメル大統領への捜査継続の是非を判断するには音声データの鑑定結果を待つ必要があるとした。実際に録音に使われた機器の一つは国外にあったこともあり、鑑定は当初から、24日には間に合わないとされていた。
 その数時間後、大統領弁護団は捜査中断要請を取り下げた。弁護団は、独自に契約した鑑定士から、音声は証拠能力がないと確信しているとの報告を受けている。また、捜査中断要請にこだわっても、最高裁が棄却する可能性も高く、政権維持がますます困難になると見て方向性を変更した。
 事実、民主社会党(PSDB)などは、「最高裁が出す捜査中断か否かの判断」を「政権に留まるか否か」の判断材料にする予定だった。大統領は捜査中断要請取り下げにより、連立与党を説得する時間を稼いだと現地各紙は解説している。
 経済政策実施で少しでもポジティブな空気を作りたいテメル大統領は、国庫への税金を滞納している法人により優しい滞納税回収計画(Refis)策定を求める声に応じ、暫定令を発令し、22日付官報に掲載した。新しいRefisでは滞納額の4割から5割程度の割引や、150~160カ月での分割払いが認められる見込みだ。
 暫定令は即刻、施行となるが、名前通り、暫定的なもので、正式な法律となるには120日以内の議会の承認が必要だ。
 議会では現在、勤続期間保障基金(FGTS)の休眠口座の資金引き出しに関する暫定令など、来週中に承認しないと無効となる暫定令が16件あり、早期の承認が必要だが、野党側は、大統領罷免審議のための特別委員会を設置するまでは採決そのものを拒否する構えも見せている。
 ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は大統領の意を汲み、大嵐の中でもとにかく政権を支え、暫定令はもちろん、年金改革その他、財政健全化のための改革案の審議、承認を進める意思を見せている。
 マイア議長は、テメル大統領が失脚すれば一時的とはいえ後継となる地位にあり、しかも失脚を加速させる罷免要請(既に12件が提出済み。24日にはブラジル弁護士会も提出する予定)に自分でGOサインを出せる立場にあるが、「自分は決して政権弱体化の動きにはくみしない」としている。