反テメル大統領派の労組や左派の活動家らが24日、ブラジリアで大規模なデモを行い、一部が暴徒化し、各省庁の庁舎に投石、火を放つなどの破壊行為が起きたため、混乱を収めるためにテメル大統領(民主運動党・PMDB)が軍を出動させたと25日付現地各紙が報じた。
現政権の進める労働法改正や社会保障制度改革に反対し、大統領の退陣と新大統領選出の直接選挙実施を求めるデモは、4万5千人(軍警発表・主催者側は15万人と発表)が参加し、平和裏に行われていたが、午後になって一部が暴徒化して軍や警察と衝突。三権広場は「戦場」と化した。
過激派は、8棟の庁舎で破壊行為を行い、その内2棟には火も放ったため、職員らは退避を余儀なくされた。この混乱で警官8人を含む、少なくとも49人が負傷し、8人が逮捕された。
負傷者の内、1人が銃撃により負傷、1人の学生は爆発で片手を失い、緊急手術を受けた。逮捕者たちの容疑は、傷害や公共物破損、不法な刃物所持と公務執行妨害罪などだ。
ラウル・ジュングマン国防相(社会民衆党・PPS)はこの事態を「大混乱」と呼んで非難し、軍の出動は、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)からの要請を受けたものだとしたが、マイア議長は、「自分が出動を要請したのは国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル、FN)であって、軍隊(フォルサ・アルマーダ、FA)ではない」として、それを否定している。
大統領府は、当初は軍警がデモの警備に当たっていたが、デモ隊の行動が過激化し、制御不能になったため、混乱を制御するためにFNを投入しようとした。ところが、連邦直轄区に残っているFNが人員不足だったため、軍を出さざるを得なくなったとしている。24日に出た臨時官報には、軍の出動期間は5月31日までとされていた。
デモ主催団体の一つ、ホームレス労働者運動(MTST)の幹部ギリェルミ・ボウロス氏は、「ブラジリアに集った15万人は無数のブラジル国民の声を代表している」と語った。治安当局は、全国各地からブラジリアに来たデモ隊は、500~600台のバスで乗りつけたと見ている。
軍出動は下院でも議員たちの口論の種となり、議会進行は約30分間中断した。野党側議員たちは軍の出動を「戒厳令発令だ」と非難した。
ランドルフィ・ロドリゲス上議(持続ネットワーク・Rede)は24日夜、最高裁に軍出動命令の差し止めを要請した。
また、マルコ・アウレリオ・メロ最高裁判事も軍出動との知らせを聞いて、「嘘だと願いたい」と、大統領を批判するコメントを出した。
一夜明けた25日、テメル大統領は、秩序は回復されたとして、軍を引き揚げる決定を下した。