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《ブラジル》移民法=一部項目拒否の上で裁可=軍政時代の外国人法を刷新=治安当局からの要求に応え

サンパウロ州の移民保護施設の母子(Alexandre Carvalho/A2img)

サンパウロ州の移民保護施設の母子(Alexandre Carvalho/A2img)

 ミシェル・テメル大統領は26日の夜、4月18日に上院で承認され、大統領の裁可待ちだった新移民法を、一部項目を拒否の上、裁可したと、25日付現地各紙が報じた。
 ブラジル国内への外国人の入国や滞在に関する規定を定めた同法は、2013年より議会審議が行われていた。

 新移民法は、1980年の軍政時代に制定された外国人法に時代錯誤な点、差別的な点があるとして、それを改める目的で、アロイジオ・ヌネス上議(当時、現外相、民主社会党・PSDB)が草案を書いた。報告官は、現在PSDB党首を務めているタッソ・ジェレイサッチ上議だ。
 拒否された主要項目の一つは、「2016年7月6日までにブラジルに入国した外国人には、たとえ不法滞在の状態でも、恩赦として居住権が付与される」の部分だ。
 人権擁護系NGO(非政府団体)、コネクタス・ジレイトス・ウマーノスで対外政策部門を担当するカミーラ・アサノ氏は、「今は不法滞在ではあるけれど、既にブラジルに住んでいる人々への滞在を合法化する可能性は、残念ながら閉ざされてしまった」と語った。
 しかし同氏は、拒否されずに裁可された部分を好意的に評価し、「これでも新移民法は前進したといえる。なぜならば、大統領への拒否の圧力を強めてきた、治安関係当局からの拒否要請の多くをはねつけたのだから」とし、「国境で逮捕された外国人の即刻の国外追放を禁じ、公選弁護人をつける事を義務とする」項目が保たれたことを評価した。
 拒否された項目で波紋を呼んだのは、「ブラジル国内に居住する先住民族が伝統的に専有してきた地域内の移動の自由は、たとえ隣国との国境をまたぐ事になっても保証する」とした点だ。
 テメル大統領は、移民が公職に就くことや公職の採用試験に受かったら居住権を与えること、「1988年より前に宣告された国外追放令の失効」も拒否した。
 法案草案者が現在の長である外務省は、拒否権を一切行使せず、全文を裁可することを求めてきたが、大統領は、国防省、大統領府安全保障局(GSI)、軍警が求めていた、少なくとも6項目の拒否要請に応えた形だ。
 これらの治安関係当局は、新移民法は、国境警備を弱体化させ、武器や薬物の流入を容易にしかねないと懸念していた。