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安良田さん、亡妻との約束果たす=101歳で『日系移民第一号史』出版

友人からの祝福に満悦の様子を浮かべた安良田さん

友人からの祝福に満悦の様子を浮かべた安良田さん

 「死んだ家内との約束を果たしたい」―。101歳にして念願の出版を果たした安良田済さん(101、山口県)の著書『日系移民第一号史及びーそれに準ずる事ごと』(日ポ両語)が、20日、サンパウロ市文協ビルの移民史料館9階で行われた。ブラジル日系文学会(武本憲二会長)主催の出版記念会で刊行されたうちの一冊で、約100人が祝賀に駆けつけ、盛会となった。
 移民百周年をきっかけに、移民の原点に立ち帰る必要性を感じた安良田さん。50年来邦字紙に掲載された特ダネ記事を丁寧にスクラップし、それをもとに「日本移民の嚆矢」と思えるあらゆる出来事を拾い集め、正史から外れてきた移民史を記述した労作だ。
 自筆をもらおうと購入者が絶えず列をなすなか、補助をしていた娘のアウレア・アケミさん(65、二世)は、「父は百歳を超え、もう時間がないと思っていた。完成できて本当にうれしい」と顔を綻ばせた。
 また、同書を購入した日伯作家アカデミーの宮村秀光会長は、「書き続ける信念を持ち続けるのは素晴らしい。意欲が凄い」と感嘆した様子で語り、上妻博彦さん(84、鹿児島県)も「凄い資料の集め方をする人で、怪物だと呼ばれたこともある」と手放しで称賛した。
 編集担当の伊那宏さん(75、長野県)は、「今回のような経験は初めてで大変勉強になった」と安堵の表情を浮かべた。「依頼を受けた頃は良かったが、安良田さんは目も耳も急速に悪くなってしまい、どう編集したらよいか相談も出来なくなってしまった」と苦難を明かした。
 だが、「昔からの付合いで本人の意向も理解していた。それを考慮して編集を心掛けた」といい、「移民一世の歴史を実体感をもって知ることができる一冊になったはず」と意義を語った。
 翻訳に携わったアナ・リジア・ポゼッチ・デ・アブレウさん(28)は「古い団体名称など知らないことがたくさん。歴史的調査に時間がかかり、一日一頁費やした日もあった」と翻訳が難航したことを伺わせた。ウエタ・ハツコ・イヴァニさん(63、三世)も「移民史の翻訳は今回が初。祖父母からは聞いたことのない歴史が沢山あった。苦い経験はあまり語りなくなかったのかも」と振り返った。
 念願の上梓を果たした安良田さんは、「11年に本を出版したときも大変反響がよかった。今日も、友人が沢山来てくれて本当に嬉しい」と満悦の表情を浮かべ、「互いに健康に気をつけて、これからも頑張りましょう」と友人らを激励していた。同書は90レアルで日系書店にて販売中。