「テメルの次は誰か」―が首都の主要な話題になっているようだ。来週火曜日、6月6日に始まる選挙高裁(TSE)のジウマ/テメルのシャッパ審議の判決が「数日以内」に出る可能性がある。今のところテメル本人が辞任する雰囲気は薄い。ここでシャッパ無効判決が出ることが、最短時間で政局を転換させられる「早道」だと思われている▼罷免審議だと半年もかかるので、今年後半の議会が再び空転してムダになるし、議員も司法関係者の方もジウマでウンザリしている。その間、肝心の年金・労働法改革がお預けになりそう。でも、TSEで無効判決が出れば、30日以内に連邦議会が新大統領を選出できる。この場合、国民が直接に選挙するのでなく、議員が選ぶので間接選挙で、新大統領は民間人の可能性もある▼6日からのTSEでは「純粋な法律判断」ではなく、かなり「政治的な法律判断」をする可能性がある。多くの政治評論家は「最高裁や選挙高裁などの最高司法機関は、パシフィカドール(国の平和を維持する調停者)としての役割を持っている。ときに政治的な意図を含めた判断を下すことはよくある」とコメントする。つまり「無効判決」で、両人とも政治生命剥奪のケースだ▼ただしPTら左派系勢力は、今でも国民の3割の支持を得ているルーラを、何とかして大統領に戻して法的特権下に置きたいようだ。憲法修正すれば直接選挙に変更するのは可能だ。だが現状ではPT系勢力が議会の3分の2を抑えることは考えづらい▼だから首都の三権広場に全伯から活動家をバス500台分も動員し、大騒ぎの上で暴徒化させた。まるで「戒厳令下」か「クーデター勃発」のような軍政時代を思わせる異様な雰囲気を現出させ、1980年代に軍政を倒した「ジレッタス・ジャー(直接選挙)」運動の気運を国民の中に甦らそうと工作しているように見える▼テメルが連立与党内で一番頼りにしているのはPSDBだ。だが、そのアエシオ党首(当時)が、JBS疑惑で上議停職処分となり、事実上「死に体」だ。PSDBの長老FHCはアエシオを一押ししていた人物であり、次の差し手がない。アウキミンサンパウロ州知事やドリアサンパウロ市長も「いつかは!」と野望を抱いているが、「大統領などの行政長官職につくには、前官職との間に半年間の空白期間を置かなければならない」という規定があるため、今回は立候補できない▼来年末までの「わずか1年半」だが、任期中に年金制度や労働法の改革などの不人気政策に取り組まねばならず、まともな政治家なら二の足を踏む。ジウマ罷免と引き換えに昇格したテメルは、おそらく「任期中に必ず改革を実現する」ことを条件に、PSDBなどと裏取引をして大統領にしてもらった。だから自らは来年立候補せずにPSDB候補を応援して、PMDBは政界の黒幕的位置に戻る。そんな裏交渉をしたのではないか。最高裁の一部にもその根回しがこっそりと行われ、JBS疑惑暴露までは、それが規定路線のように思われていた▼そんな裏取引を壊すために、連邦検察局はJBS司法取引を司法界にも極秘で実行した。今回は特別にジャノー連邦検察庁長官が直々に担当し、クリチーバ連邦地裁の担当者すら知らなかった。今までの司法取引証言から分かるように、クリチーバの捜査は最高機密なのに、法務大臣を通して大統領に筒抜けになっていたからだ▼ジャノー長官はごく一握りの連警捜査官に背後関係を一切知らせず、ただの「政治家への裏金の受け渡し現場の撮影を」と指示した。ジャノー長官は明らかに「大統領の捜査」を前提にしている。だからついこの間までの「テメル温存」気運は一気に吹き飛んだ▼すでにラヴァ・ジャット作戦(LJ)の予算は昨年の3分の2に削られたと報道された。その上、「JL作戦に弱腰だった」とアエシオに批判された前法相は辞任させ、大統領への捜査に否定的な新法相が就任した▼追い詰められたテメルは何をしでかすのか―。あからさまなJL捜査妨害が強まると、一般国民の反発を買い、「街の声」が反テメル一色になるだろう。(深)