サンパウロ市クラコランジアで5月21日、麻薬密売者や常用者一掃作戦中に新聞記者に近寄り、「社会福祉士か」と尋ねた常用者がいた。麻薬浸けの生活から抜け出すために入院したいと、彼が身分証明書を見せながら語る様子を収めたビデオをその記者がフェイスブックに載せると、同記者のもとにはフェイスブックにはサンパウロ州内陸部の小さな町の人のメッセージが山のように届いた。その一人は常用者の母で、5カ月間探していた息子が見つかったと感謝した▼35歳の誕生日に南部のサンタカタリーナ州へ行くと言って家を出たきり音信不通となっていた息子の所在を確認した母親は、23日午前0時半にメッセージを送り、直ちにサンパウロ市へ。友人と共に朝6時にルス区に着いて、ビデオを見せながら息子を探す母親を見た常用者が、プリンセーザ・イザベル広場に母親を連れて行ったが、息子はいない▼だが、母親に「ビデオを撮ったのはあなた達か」と訊かれたテレビ局スタッフが、「違う」と答えつつ、正午のニュースに間に合うように番組を準備。21日に入院を果たしていた息子は看護士詰め所のテレビで母親を見、社会福祉士に電話するよう頼んだ▼当日午後1時半に再会した親子は、同日中に地元に。再入院はせずに麻薬と手を切りたいという男性には薬物依存に関する専門家がつき、仕事も始めた。「人生を再建し、母親や子供の世話をしたい」との男性の言葉は、家族の許に返った喜びの大きさを物語る▼一方、裕福な家庭に育ったが、15年前に姉が仕組んだ殺害計画で両親を亡くした29歳の薬剤師は、麻薬に手を染め、5月30日に入院となった。麻薬が人を狂わせ、家庭を崩壊するのを止める術はどこにあるのか。(み)