群馬県邑楽郡大泉町に『ブラジリアンプラザ』が4日に、ブラジル人向けコミュニティセンターとして改装されて再出発する。本格的な開館は来年6月の予定。施設内には外国人障がい者児童施設、パーティー会場、移民史料館の設置などが予定されている。同施設を所有するアバンセコーポレーションの代表取締役、林隆春さん(67、岐阜県)=愛知県一宮市=が先月23日に来社した折、同施設の計画や在日日系ブラジル人の現状を聞いた。
ブラジリアンプラザは08年のリーマンショックにより日系ブラジル人が激減し、開店休業状態となっていた。「ブラジルタウン」大泉町のシンボル的な場所でもあり、林さんが「在日日系コミュニティの拠点にしたい」と考えて買い取った。
リーマンショック後にサンヨーの大工場が中国に移転して雇用が減り、コミュニティの指導者的日系人の多くが帰伯してしまった。にも関わらず、ブラジル人にとって便利な地域なだけに町内のブラジル人人口は増加の一方で、90年代の10%からいまは13%まで増えているという。
プラザ内には外国人障がい者児童を引き受けるデイケア施設、地域のブラジル人が結婚や誕生日などに使える貸し出しパーティー会場などをプレ開館として始める。
1908年から始まるブラジル日本移民の歴史から現在のデカセギまでを一つの流れで説明する移民史料館や、ブラジル人児童が手軽にポ語書籍にふれられるような図書室が作られる予定。「地域の住民同士の交流はもちろん、日本に働きに来たブラジル人、永住を決めた人、その子どもらが自分たちのルーツを知り、未来を考える場所にして欲しい」と期待した。
幅広いコミュニティセンターであると同時に、日本人が訪れたときに立ち寄る観光の名所にする方向性も持っている。日本人のためにも旅行会社JTBやはとバスと協力して同プラザの資料館や町内の観光など「日系人を理解する」という目的を含んだ『バスで南米を訪ねようツアー』も計画している。
長年派遣会社を経営してきている林さんだけに、在日日系ブラジル人を見る目は厳しい。「ブラジル人の多くは『共存、共有』の発想がなく、人の上に立ちたがるばかりでコミュニティを育てる意識がない。代表的な組織がないから日本政府に対して意見を言うことも出来ない。プラザがコミュニティの中心となり、史料館や図書館などで自分達のことを知り、将来の夢を描く場所になれば良いと考えている。ゆくゆくは日系ブラジル人が自ら経営するようになって欲しい」と語った。
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アバンセコーポレーションの代表取締役、林隆春さんが見る「10年後の日本」は、トラックは自動運転になりトラック運転手という職業がなくなる。宅配便はドローン(無人小型飛行機)になる。介護は介護用ロボットや外国人が主に担当するとか。つまり、ロボットの開発などにより、「10年後に無くなる職業」がいろいろある。それが分かっているから日本人の若者はその種の職業には就きたがらず、機械化されるまでの5年、10年を外国人労働者が一時的に補っているという構図らしい。つまり、これから先は単純労働で日本にデカセギに行っても、使い捨てにされるだけ。長期間、日本で働きたいなら、しっかりとした技能を身につけないといけないようだ。