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《ブラジル》じわじわと追い詰められるラヴァ・ジャット作戦

ラヴァ・ジャット作戦を指揮するデルタン・ダラニョル連邦検察官(Foto: Luis Macedo/Camara dos Deputados)

ラヴァ・ジャット作戦を指揮するデルタン・ダラニョル連邦検察官(Foto: Luis Macedo/Camara dos Deputados)

 昨年来、ラヴァ・ジャット作戦の対象に首都の政治家が入るようになり、「激震の発信地」がクリチーバとブラジリアの両方になった。最近特にジャノー連邦検察庁長官が「台風の目」としての存在感を強めてきた。その暴風に抵抗するためにテメルを中心とした「アコルドン」(大同盟)が裏で形成されている▼「テメル、ルーラ、FHC、サルネイ、ジルマール・メンデスらがアコルドン(大同盟)を作っている。汚職政治家が大同団結してラヴァ・ジャット作戦を潰そうとしている。イタリアのマオ・リンポ作戦では、汚職政治家が団結して司法に圧力をかけ、捜査予算を減らして、捜査官や検察官の手足を削り、捜査の手が長く伸びないようにした。それと同じことがブラジルにも起きている」。そのような警告をフェイスブック上で、有名法律家ルイス・フラビオ・ゴメスらが発している▼ルーラとFHCが手を組むなど通常ではありえない。ある意味「歴史的な大同団結」だ。連邦議会の半分以上を抑える影響力を持つ可能性がある。これを持って「CAIXA2(隠し口座)の無罪化」を通そうとしている感じだ。これが通ればLJ作戦は弱体化し、多くの政治家が救われる▼イタリアではマオ・リンパ作戦が汚職政党を一掃したかに見えた。だがその後、ベルルスコーニが首相に就任し、イタリア最大の建築会社の社長が大臣に就任した。「まるでルーラが大統領に戻って、オデブレヒトのマルセロが財務大臣になるようなものだった」という解説をする政治評論家もいた。つまりイタリアは一瞬キレイにはなったが最終的にはある程度元に戻ってしまった▼アコルドンを実現しつつあるテメルの裏交渉能力は、ジウマの比ではない。テメルのこの能力が良い方向で発揮されていれば、良い意味で後世に名を遺す政治家になれた。一見、PT対PSDBのように見せかけて、実は「同じ穴のムジナ」だった訳だ▼それら密談と関係あるか分からないが、結果的にLJ作戦の予算が昨年比3分の2に減らされた。エスタード紙27日付で連警への締め付けに関してLJ作戦のカルロス・フェルナンド・ドス・サントス・リマ連邦検察官は「汚職政治権力による、じわじわとした連警の窒息死を狙ったものだ」と批判する▼さらに法務大臣には、テメルの長年の友人である「大統領の弁護士」的な人物が就任し、「大統領への捜査は不適当」と発言した。新法相は、6日からジウマ/テメルのシャッパの無効化を問う裁判を行うメンバーと、つい最近まで同僚だった。テメルを権力の座から引きずり降ろす可能性がある裁判に対して、最も「顔が利く」人物を、司法界で最も高い地位に付けた。裁判対策としての人事だ▼しかも新法相は、2011年から同じ人物が務める連邦警察トップを入れ替える可能性がある。LJ作戦を支えてきた人物であり、捜査官側からは心配する声が上がっている。無理もない。トランプ米大統領が就任して、真っ先に法務副長官を首にしたり、つい先日も自分を捜査するFBI長官を辞めさせたりして問題になっているが、同じ構図といえる▼心理的な圧力に加えて、予算面、人事面でも圧力を加えている。これはテメルが最後の手段に出ているといっていい状況だ。MBL(ブラジル自由運動)などのLJ作戦を擁護してジウマ罷免世論を盛り上げてきた「街の声」は、今もって「フォーラ・テメル」とはいわない。左派勢力は「奴らはPSDBとつながっている」と批判してきたが、その可能性をうかがわせる▼「アコルドン」の一角には司法界も入っている。メンデス最高裁判事は現在、「第2審判決で有罪なら刑務所収監」を「第3審」に変える動きをしているとゴメス氏が訴え、「6対5で変更承認される可能性がある」と見ている。これはSTJで有罪判決ができるまでは収監されないことを意味し、STJの審理の遅さからすれば事実上、生きている間は刑務所に入ることはない▼ルーラ、アエシオ、テメルら政界首領らが有罪になっても、STJで判決が出るまでは収監されない。「LJ作戦への反撃だ。政界首領逮捕を骨抜きにするための工作だ」とゴメス氏は見ており、「メンデス判事の罷免を」とまで言っている。捜査陣にとっては実に深刻な情勢だ。(深)