【既報関連】地理統計院(IBGE)が1日に「ブラジルGDP1%成長」と発表した事を受け、テメル大統領やメイレレス財相は「これで景気後退(リセッション)は終わった。社会保障制度、労働法などの改革を継続しよう」と、〃5・17JBSショック〃で失われた求心力回復に躍起になった。だが、市場関係者や経済学者たちは、景気回復基調に太鼓判を押すことに慎重、または懐疑的な姿勢を崩していないと2日付現地各紙が報じている。
今回の1%成長は、今年第1四半期(以後「今期」)のGDPが、昨年第4四半期(以後「直前期」)を上回ったに過ぎず、現在のGDPはまだ2010年の水準だ。
今期のGDPを牽引したのは農業部門だが、石油、天然ガス、鉄鉱石関連も、コモディティ価格上昇の影響で、直前期と比較して0・9%プラス成長した。しかし、これも昨年同期比でのマイナス(1・1%)は避けられなかった。
コモディティが好調なことは、中国が2年ぶりに前年比6・9%成長を記録し、ブラジルからの輸入量を7割近くも増やしたことなどを反映している。
経済の専門家は、「多くの産業部門での成長」と「継続的な成長」が確認されてこそ、不況からの脱出と言えるが、そのどちらもまだ確認されていないという。
また、雇用の回復が遅れている事で、内需が頭打ちとなっているため、サービス部門も伸び悩んでいる。
IBGEコーディネーターのレベッカ・パリス氏は、「不況が本当に過去のものとなったかどうかは、今後の結果を見て判断しなくてはいけない」と語る。
経済学者のデルフィン・ネット氏は、「今回の結果でブラジル経済が回復し始めたと見ることは出来るが、今のブラジルは、政治的混乱の影響が強すぎて、楽観的にはなれない。この混乱が長引けば、今年全体のGDPは昨年比でゼロ%成長になるかもしれない」と語っている。
今後の経済成長を楽観視出来ない要因はもう一つある。それは投資の減少だ。投資は技術開発や生産性向上に不可欠で、生産能力の拡大がなければ雇用の拡大や経済の伸展もありえない。だが、投資は12四半期連続で減少し続けている。今期の投資は、直前期比でマイナス1・6%、昨年同期比でマイナス3・7%だった。