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《ブラジル》選挙高裁=ジウマ/テメルの裁判で報告官と長官が激突=政界浄化か、秩序の安定か=O社デラソンが最初の焦点=議論が長引き、投票遅れ気味

7日のベンジャミン報告官(José Cruz/Agência Brasil)

7日のベンジャミン報告官(José Cruz/Agência Brasil)

 6日午後7時から、選挙高等裁判所(TSE)で、2014年大統領選でのジウマ/テメル・シャッパの当選無効を問う裁判が再開した。7日午前までの段階では、この裁判の資料にオデブレヒト社の報奨付供述(デラソン・プレミアーダ)を含めるか否かで、報告官をつとめるエルマン・ベンジャミン判事の熱弁が注目を集めていた。7日付現地紙サイトが報じている。

 TSEでは、審理初日の6日から、ベンジャミン報告官とジウマール・メンデス長官との間の議論が白熱し、注目を集めた。
 「これを機に政界での選挙改革を」と意気込むベンジャミン報告官は6日、「2003年(労働者党・PT政権)以前から選挙用の秘密口座(カイシャ2)の問題はあったし、その頃から連邦警察も動いていた。だが、従来はお蔵入りさせてきた検察も今回はその慣習をすてた」と主張した。
 これに対し、メンデス長官が「軍政時代のTSEは、民主主義となった現在より、選挙無効の裁判が少なかった」と反論すると、ベンジャミン報告官は、「軍事政権時代のTSEは民主主義を唱える人を罰したが、現在のTSEは民主主義に反する人を罰するのだ」と切り返した。
 意気込む同報告官に、メンデス判事は「現在、我々は大統領のシャッパを裁くという、国の安定性にも関わる審理に臨んでいる。そのことを忘れてはならない」とし、ベンジャミン報告官に慎重に事を行うよう促した。
 両者の温度差は、翌7日午前の審理でも引き続き見られた。6日の審理は被告側からの質問や要求を4件却下したのみで終わったが、7日の午前中は、シャッパの要求の中で最も重大視されていた「オデブレヒト社のデラソンは採用しない」との要求に対する討論が繰り広げられた。
 ジウマ、テメル両陣営は、同デラソンは14年12月の同裁判開始時にはなかったことだとし、資料から外すよう要請した。ただ、このデラソンにはジウマ氏の選挙参謀ジョアン・サンターナ氏への贈賄などに関する供述も含まれている。同氏は同件で逮捕され、有罪となっただけでなく、自身もデラソンを行い、犯行を認めている。
 ベンジャミン報告官はこのデラソンを裁判に使うことを積極的に支持した。同報告官はその理由の一つとして同デラソンの「世間への認知度」をあげ、「今や、アマゾンで隔離されている原住民でもない限り、同社のデラソンのことを知らない人など誰もいない」と言い切った。
 すると、かねてからデラソンに関して消極的な発言を行っていることでも知られるメンデス判事は、「それならJBSのデラソンも入れるべきだし、来週は(デラソンが予想されているPT大物政治家の)アントニオ・パロッシ氏か」と皮肉る一幕も見られた。
 裁判の行方は、政界浄化を願うベンジャミン報告官と、秩序の安定を願うメンデス長官の二極化が予想されるが、7日朝もまだ投票に入っておらず、長期化もありえる。