「世界を変えた天才」、「魔術師」、「10年に一人の経営者」、「アイ・ゴッド」(英語で「私は神」の意味になる。〃アイ・ポッド〃にかけた洒落)。これらの言葉は、2011年に56歳の若さでこの世を去ったアップル社元社長のスティーブ・ジョブズを賞賛する雑誌の見出しの数々だ。
iPhoneやiPad、MacBookなどの革新的な製品を生み出したアップルの創業者である彼の人となりを知ることは、彼の実業家としての成功譚をなぞること以上のものだ。
サンパウロ市ジャルジンス区の人気博物館「映像と音の博物館」で、14日より「スティーブ・ジョブズ、ビジョナリオ」展が始まる(一般公開は15日より)。
「展示を見た人が、アップル製品がどうやってできたかだけでなく、それを生み出したジョブズの内面には何があったのかを知る事が出来るように、彼の繊細さ、ビジョン、恐れが分かる展示にした」と、同展示のキュレーターでイタリア人のイッコ・ミリョーレ氏は語る。
来場者たちに、ジョブズがいかに思考をめぐらせ、いかに創造したかが分かるように、展示コースの各部屋には音声説明がついている。
最初の展示室は〃精神性〃と名づけられ、ジョブズと仏教の関わりについての展示がある。また、〃アップル〃の社名の由来についてのビデオ展示もある。
〃競争〃の部屋では、アップル社が同業種のIBMやマイクロソフトのビル・ゲイツなどといかに激しく競ったかについての展示がされている。
テーマ別展示には〃革新〃、〃挫折〃、〃ビジネス〃、〃夢〃などがあり、200点を超える写真やレポート、個人の所有物、記録映像、歴史的な物品などが展示されている。
この展示は、サンパウロの前にリオでも行われた。また、イタリアでも2011年に別バージョンの展示がなされた。どこの展示でも、世界屈指のアップル製品コレクター、マルコ・ボリオーネ氏の所蔵品が基になっている。
展示品で最も貴重なものは、1976年の製造プレート付のコンピューター、アップル1だ。これは2010年のオークションで、21万3600ドルで落札されたもので、現在の評価額はその2倍以上とされている。
もう一つの目玉展示は、1983年に発売された「リサ」だ。これはマウスが付いており、マウスを動かして、画面上の矢印を小さな画に合わせた後、マウスをクリックすることで動かす世界最初のパーソナルコンピューターとなった。しかし、これはアップルの最大の失敗でもあった。
この展示を実現したフルブランド・ブラジル社のマルコ・ギドーネ社長は、「彼のような複雑な人生を送った人の人生を紹介する事はとても重要だ。アメリカのシリア移民の子として生まれ、養子に出され、ゼロから一大企業を創り上げた。彼は栄光を手にする前に数え切れない失敗も経験している。これは今のブラジルの若者に必要なメッセージ。つまずくこともあるかもしれない、しかし、這い上がり、自分の道を信じるんだ。夜の8時の人気ドラマにありがちな、リオの富裕層の家に生まれ、きらびやかな生活をして、男をフッタの、男にフラレタのとわめくような人間と、ジョブズは少々違っているだろう?」と語った。
「スティーブ・ジョブズ、ビジョナリオ」展は、映像と音の博物館(Avenida Europa,158)で、8月20日まで。
月曜休館、火曜から金曜は11時から20時まで、土曜は10時から21時まで、日曜祝日は10時から19時まで。入場料は10レアルより。
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