ジウマ/テメル・シャッパの無効化を問う裁判で現状維持の判断が出て、当面はジャノー連邦検察庁長官による大統領告発が政局の焦点になっている。これも大事だが、労働者党(PT)前政権や現テメル政権の政策自体をもっと議論すべきだと常々思う。政策の良し悪しをきちんと総括しないと、同じ失敗を繰り返す▼人にたとえれば、「病気を治す」のが汚職撲滅だ。それと同時に、病気の原因となった生活習慣を見直し、むだ遣いを減らし、新収入を探す必要がある。それが「財政再建」だ。そこで少しでも財政のゆとりを作り、将来に備えてインフラ整備、教育投資の充実までを議論するのが政策論の筋だ▼英国紙「ザ・ガーディアン」は6月1日付で《ラヴァ・ジャット作戦(LJ)後のブラジルが良くなるかは、誰が権力の座から落ちるかではなく、誰が次に来るかにかかっている》と喝破した。テメル政権がじわじわとLJ作戦の首を絞めている理由は、その捜査が政治家の裏金の動きを封じてきたからだ。政治家の裏金の動きをたどれば、古くからの「汚職文化」や「PT政権の13年間」の総括に他ならない▼レコルジTV局ニュースによれば、PT政権はなんと40公社を作りだした。テレビ局、交通公社、生化学研究所など。その一つが、ペトロブラスに採掘プラットフォームを製造提供する7ブラジルだ。すべてに共通しているのは、最初から赤字であり、民間企業ならとっくに潰れていた経営体質だったことだ。同報道によれば、7ブラジルだけで260億レアルの累積赤字、テレビ局(EBC)は60億レアル…。PT政権の考え方はケインズ経済理論そのもので、不況を克服するためには国がどんどん借金をして公共投資をして民間に金を落とすというもの。その結果、とんでもない赤字が国の財政を圧迫する。さらに公務員激増で、人件費が重く財政にのしかかっている▼連邦公務員の数はFHC政権最後の2002年には3万5千人だったが、2016年には6万7千人と倍増。その間の給与支払い額は02年に15億レアルだったのが、16年には75億レアルへと5倍に跳ね上がった▼連邦以外の公務員もみれば02年に81万人だったのが、16年には108万人。PTだけで、試験合格者と政治家指名者の公務員を毎年2万人ずつ増やしてきた。13年以降の財政難の根源には、この公務員激増がある。ジウマ政権だけで12万人がそのように採用され、湯水のようにその給与が払われた▼それが公務員年金の支払いにも大きく影響している。5月7日付エスタード紙によれば、民間企業従業員が入るINSS制度は年金受給者約3千万人に対し、平均1200レアルを払っている。だが、公務員年金制度には270万人に対して平均7500レアル、軍人年金制度には30万人に対して平均9500レアルを支払っている。その結果、国庫への負担は前者が3千万人に対して1500億レアルなのに対し、公務員の場合は270万人に対して1330億レアルにもなる。とんでもない将来への禍根を残した▼JCネゴシオ・サイト(jc.ne10.uol.com.br)昨年8月8日付電子版によれば、国家財政が危機的になったこの10年間、特に最後の4年間、公務員にかかる費用は、国家収入と関係なく増大してきたと指摘する。中でも連邦議会職員の給与調整は一番高く、06年から15年の間に234・70%も上昇した。この間、インフレ率(IPCA)は77・21%だった。公務員全体でも157・20%も上がった。それが将来の年金に反映する▼年金・福祉制度改革法案は、このJBSショックによって6月中には承認される見込みがあったのに、今年後半に持ち越された。「テメルの首」は話題としては興味深いが、別の誰かが大統領になっても同じ政策を続けるのであれば、根本的な問題解決にはならない。(深)