【既報関連】ブラジルの食肉大手JBS社は、カルネ・フラッカ作戦や5・17JBSショック後、業績不振や株価下落に苦しんでおり、20日に資産を売却して当座の資金を確保する計画を発表した。だが、21日に司法当局が同社とその責任者の資産売却などを禁じたと22日付現地紙が報じた。
21日朝、連邦直轄区のブラジリア連邦裁判所第10法廷のリカルド・レイテ判事が、JBS社が先週発表した、同業のミネルヴァ(M)社への10億レアル規模の資産売却を差し止めた。同判事は、JBSは社会経済開発銀行(BNDES)からの融資と同社の業務拡大との関係を明確にする事も要請した。
同判事は、「JBS社主らが報奨付供述の根拠として提出した証拠は不十分」だし、「同社が市場に影響を与えうる未公開情報の発表直前に株式売却やドル購入を行い、巨額の収益を得た疑いがある中、M社への資産売却を認める事は軽率だ」としている。
同日午後には、総弁護庁(AGU)が、JBS社と、同社がBNDESから融資を受けた際の責任者の資産凍結を求めた。AGUは資産凍結要請は、JBSがBNDESに与えた損害額(推定8億5千万レアル)が明らかになった際に、凍結資産から賠償させるためとしている。連邦会計監査院(TCU)は、要請は受理したが、内容の検討は数日先になるとした。
JBSは、20日に発表した総額60億レアル規模の資産売却計画に先駆けて、M社への資産売却交渉をまとめていた。
JBS社がM社に売却するはずだった資産は、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイでの牛肉加工生産ラインで、その価値は3億ドル(10億レアル相当)だった。M社は、契約書には、司法が介入するなどして即時資産引渡しが行えない際の諸条件も決められていたと発表した。
JBS社は総額500億レアル近い負債を抱えており、内180億レアルは返済期日が迫っている。公的銀行や大手民間銀行からの融資を受けるのが困難な同社にとり、数少ない選択肢の資産売却差し止めは大きなダメージだ。
一連の動きはJBS社主のジョエズレイ・バチスタ氏が連邦警察で再度の供述を行っている最中に起き、JBS弁護団は「JBSとその株主たちは報復措置の被害を受けている」と書面で発表。JBS社も「TCUで自らの立場を弁明する」としている。
BNDES職員の代表組織、AFBNDESは「職員たちに落ち度はなく、公庫にはいかなる損害も与えていない」として、資産凍結措置に抗議したが、AGUは「目的はJBSの犯罪捜査」と釈明する文書を出した。