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「人種差別」?、それとも?=期待の女性シンガーソングライターの相次ぐ騒動

 ブラジル国内で早くから「天才女性シンガーソングライター」と目されて来た期待のアーティストが、待望の新作発表のタイミングで、相次ぐ「人種差別」のトラブルに巻き込まれた。
 マルー・マガリャンエス(24)は16歳だった2008年に、ネット上で発表した自作曲の音源が世に認められてデビューし、一躍、「ブラジル音楽界期待のアーティスト」と目されるようになった。
 彼女はその後も3枚のアルバム、そして現在の夫である、ロックバンド、ロス・エルマーノスの元・中心人物マルセロ・カネロとのバンド、「バンダ・ド・マール」も成功させた。この6月、彼女はソロとしては6年ぶりとなる待望のアルバム「ヴェム」を発表した。
 だが、その直前の5月19日、このアルバムからの先行シングルとなった「ヴォセ・ノン・プレスタ」のミュージック・ビデオをユーチューブ上にあげたところ、騒動が起きた。
 この曲は60年代のボサ・ノヴァ調のサンバをよりジャズ色を濃くしてアレンジしたもので、マルーは、あまり動的なイメージのない彼女としては珍しく、様々なロケーションでゆるやかに踊っている。
 だが、その背後、ほとんどの場合はマルーの入っていないシーンで、男女3人ずつ計6人の黒人ダンサーたちが、筋骨隆々の体を主にスロー・モーションで動かした踊りを披露し続けた。
 このビデオは「アート的で美しい」と評価された一方で、「人種差別的だ」とも批判された。批判する人たちの目には、白人であるマルーがあたかも主人でもあるかのように振舞っているように見えたようだ。また、人によっては「マルーだけ服を着込んでいるのに、黒人ダンサーは男性は上半身裸で、女性もかなり薄着だった」ことを差別的だとした人もいた。
 その5日後の5月245日、マルーは「見た人の気分を悪くしたなら謝る」と謝罪し、演出の意図を「黒人ダンサーたちのダンスを通した美しい体の動きを見せたかった」としている。
 だが、それから1カ月後の6月23日、マルーはグローボ局の番組「エンコントロ・コン・ファッチマ・ベルナルデス」の出演時にまたも物議をかもした。
 それは、司会のファッチマ・ベルナルデスから「ヴォセ・ノン・プレスタ」がどういう曲であるかを聞かれたときだった。このときマルーは「〃白人にサンバなんて歌えるわけがない〃という偏見を持った人に捧げた曲だ」と語った。
 この発言の真意は明らかではないが、1カ月前起きた騒動に対抗する意味の、黒人に対する挑発だと解釈した人たちからは、またしても怒りの声が起きた。
 だが、前回の騒ぎを行きすぎだと感じていた人や、かねてからサンバ界内にある「サンバは黒人文化のもの。白人などには歌えない」とする風習を知っている人たちの中からは、「それは事実を言ったまでに過ぎない」として、マルーを擁護する声もあがった。前回の騒動において「白人のくせにサンバなんて歌うな」との批判がネット上などで起きたとしても不思議はなかったのだ。
 なお、この番組の中でマルーは、同曲のビデオについて「黒人ダンサーたちのものすごくセクシーな肉体の動きを表したかっただけだ」とし、人種差別を重ねて否定していた。(24日付R7サイト、24日付GAZETAWEBより)