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《ブラジル》癌治療事情=公共医療機関の間で格差=治療ガイドラインも不徹底=化学療法を自ら調べた患者も

世界献血者デー記念イベント出席時のリカルド・バロス保健相(José Cruz/Agência Brasil)

世界献血者デー記念イベント出席時のリカルド・バロス保健相(José Cruz/Agência Brasil)

 ブラジル保健省管轄の統一医療保健システム(SUS)は、国と州、自治体が連携し、全国民が公共の病院や医療センター、保健所などで無料または安価で医療を受けられるシステムだが、癌治療においては医療機関ごとに格差が存在すると、27日付現地紙が報じた。
 現在40歳のトレドさんは6年前に乳癌に犯されている事が分かり、SUSで7種の化学療法を受けたが、日に日に治療の選択肢が減っていくのを実感していた。「常に治療手段のことを調べてきた。でも、知れば知るほど、ネガティブな側面も見えてきた」と語る。
 7カ月前からトレドさんが受けている、経口化学療法はトレドさんが元々治療していた医療機関では受けられなかったが、トレドさんは他のSUSでならこの療法を受けられる事を知った。
 ある病院では保健省の規定以下の治療しか受けられず、別の病院では規定以上の治療が受けられるという実例は、同じSUSの医療機関でも、癌治療において大きな格差がある事を浮き彫りにした。
 この格差は、癌患者を支援する非政府団体(NGO)オンコギア研究所の調査、「私のSUSはあなたのSUSと違う」でも明らかになった。この調査結果は27日にサンパウロ市のシリオ・リバネス病院で開催される学会で発表される予定だ。
 同調査は情報公開法に基づいて進められ、代表的な癌4種について、各医療機関が治療用ガイドラインを持っているか、同じ街の医療機関なのに格差はないかなどのデータが集められた。
 オンコギアが送った質問書に答えた全国の医療機関は52で、ガイドライン皆無の機関は18、残りの34機関は少なくとも一つの癌のガイドラインを持っていた。
 ブラジルには、SUSで癌治療を受けられる医療機関が288ある。各病院は連邦政府から予算配分を受けているが、治療法の採用に関しては独自の裁量が与えられている。
 サンパウロ州の乳癌治療機関11カ所の内、化学療法実施用のガイドラインがあるのは6カ所。内1カ所は保健省の基準以下だったが、2カ所は適切、3カ所は基準以上だった。
 肺癌においても、九つの州には、保健省の治療基準を下回る治療機関があった。現場の研究では、適切な治療を施せば、癌の転移拡大防止や薬による副作用の抑制、生存期間延長が可能である事が分かっているが、SUSで適切な肺癌治療を受けている患者は約半数だ。
 「行政の統制が取れておらず、治療レベルに対して払いすぎなのか、少ない負担で高レベル医療を受けているのか掴めない」と言うのは、保健医療部門に詳しい弁護士で、オンコギアの調査にも参加したチアゴ・ファリーナ・マトス氏だ。