日本移民110周年を控え、日系社会の全体像が明らかに―。サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長、以下、人文研)は、日本財団の資金協力を得て、創立50周年記念事業として『日系団体調査』を実施している。
地域を基盤とした会館を中心とする日系団体や街頭での調査を通じて、各地の日系団体や日系社会の規模や活動状況、地域社会への影響力などを総合的に分析するもの。最終的にそれを総合して、日系社会の全体像を統計的に把握することが目的だ。
細川多美子常任理事は、「盆踊りや日本祭が地域に根ざして盛り上がっている事例もあり、いかに日本性を残しているかを見ていくことも必要だ」として、日系社会が消滅するという一般論に疑問を挟む。
「これまで日系団体の正確な数も把握されて来なかった」と語り、「現状をきっちり見分けることなしに、日系社会を語ることは出来ない」と意義を語り、調査が完了すれば、ブラジル全国の文協リストが完成する見込みだ。
昨年3月頃から調査に着手し、これまでに約120の日系団体を訪問した。調査を本格化させ、二人三脚で5チームに分かれ、来年3月迄に残りのおよそ300の日系団体を訪問する予定だ。
これまでの調査を振り返って、「予測に反して、三世は日系人という矜持を強く持っており、日本性が大事にされていた」と印象を語り、「ポ語が中心になっても、会館の片付けを自発的に行うなどの習慣が残っている。世代が交代しても会を運営しているのは日系人が殆どというのも興味深い」と語る。
なかには、一度潰れそうになった文協が息を吹き返した事例もあるといい、「問題意識を共有することで、共通問題を共に対処してゆくことも可能になる」と期待を語る。
来年6月までに調査結果を取りまとめ、日ポ両語で報告書を刊行する予定だ。細川常任理事は「皆で力を合わせて持ち応える知恵を出してゆくためにも、ぜひ調査にご協力を」と呼びかけている。