来月9日に任期満了を迎えて帰国する在サンパウロ総領事館の中前隆博総領事への感謝を込めて、日系34団体共催の送別会が28日夜、サンパウロ市文協で賑やかに開催された。他州やサンパウロ州奥地からも人が駆けつけ、200人以上の関係者が別れを惜しんだ。
日伯両国歌斉唱が声高らかに歌われた後、日系諸団体を代表して呉屋春美文協会長が感謝の言葉を述べた。
呉屋会長は、同総領事の着任後すぐだった平野植民地100周年式典の折、「しばらくの間黙祷され、景色をゆっくり見回されていた。祈る様子はとても感動的で、『日系社会のために一生懸命貢献する』との決意をかいま見るようだった」と振り返った。
「積極的に物事に参加挑戦し、人々と接する姿勢は周囲に強い印象を残してきた」と実績を紹介し、「話したいことがまだたくさん。どうかいつまでも日系社会を見守って下さい」と名残惜しそうに語った。
出席者の名前が呼ばれ、物思いに耽った様子で耳を澄ませていた中前総領事も、「一人一人との思い出を感慨深く想いながら拝聴していた。温かく迎えて下さり、感謝してもし尽くせない。生涯の宝になった」と感慨深げに語った。
日系団体から感謝状や記念品を贈呈。地上階に会場を移し、懇親会となった。与儀昭雄援協会長の音頭で祝杯が捧げられた。中前総領事は着席することなく各席を廻り、関係者に謝意を伝えていた。
広島県人会の平崎靖之会長は、カープ祝勝会で共に郷里を応援し、原爆追悼記念式典では涙で言葉を詰まらせた同総領事との熱き思い出を振り返って、「これほどコロニアに尽くされた総領事は珍しい。本当に特別な人」と称賛した。
ノロエステ連合日伯文化協会の安永信一会長も「ノロエステには7回も足を運んで下さった。本当に素晴らしい総領事」と寂しさを滲ませた。
ブラジル日本青年会議所の中野マルシア会長は「若者に大きな信頼を寄せ、『若者が主人公だ』と背中を押して頂き、本当に感激した。日系社会の課題に対し積極的になれたのは総領事の大きな遺産だ」と語り、「東洋街活性化プロジェクトは、将来に繋がる大きなものになる。日系諸団体や駐在員も巻き込み日系社会を盛り立てたい」と意気込みを見せた。
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中前隆博総領事は「時間と体力が許す限り、多数の行事に参加してきた」と挨拶。107カ所の移住地を訪問したことを明かし、若手の活躍への期待感を表明、帰伯子弟問題について理解と協力を求めた。「先人の残された財産に感謝し誇りに思う。日系社会の将来は素晴らしいものになると信じている」と語り、110周年では「日系社会が一体となり成功裏に行われ、若手活躍の機会になるようお願いしたい」と激励した。総領事の帰国までもう一週間を切った。最後の挨拶をしたい人は、お急ぎを。