テメル大統領が連邦検察庁からの告発に対し、下院の憲政委員会(CCJ)での告発受理阻止に向けた準備を進める一方で、下院の中では、大統領が停職になった場合に最大6カ月間、代行を務めるロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)に期待する勢力が出てきていると、7日付現地紙が報じている。
昨年5月のテメル政権の成立以来、連邦政府に副大統領職は存在せず、仮にテメル氏が大統領職続行不可能となった場合には、下院議長であるマイア氏が大統領職を代行することになる。
マイア氏は昨年7月の下院議長就任前後からテメル氏への忠誠を誓っており、5月17日のJBSショックで、世間や政界からテメル大統領の辞職や罷免を求める声が強まってからも、一貫してテメル政権の存続を主張してきた。
だが、政界関係者によると、テメル氏が検察庁から告発を受ける前後からの数週間で、マイア氏が大統領代行となる可能性を現実のものとして受け止め始めており、同氏周辺で「マイア待望論」が強まっているという。
同氏待望の動きを支えているのは、財界や企業の存在だ。マイア氏はこれらの業界とかねてから良好な関係を築いて来ており、財界関係者の受けがいい社会民主党(PSD)、進歩党(PP)、ブラジル社会党(PSB)、さらにマイア氏のDEMがマイア氏の大統領代行就任に興味を持っているという。
PSDやPPといった政党は、今回のテメル氏告発の下院での投票でテメル氏が是が非でも票がほしい、共に議員数30~40人台の政党であり、ここが告発阻止に回らないとテメル氏は苦しくなる。
さらに6日、下議数3位で、現在、連立与党離脱の可能性が高まっているPSDBの党首代理、タッソ・ジェレイサッチ氏が、テメル政権は「もはや統治不能な状態」にあると発言した。同氏はさらに、テメル氏に対する告発が下院と最高裁で受け入れられてテメル氏が最大180日間の停職となった場合、大統領代行となるマイア氏について、「国の安定性を保つために最低限必要な政党の支持を集めることが出来る器だ」との見解も明らかにした。
DEMとPSDBは、カルドーゾ政権(1995~2002年)以来、常に連立関係が続いている。また、マイア氏は、現在の野党勢力である労働者党(PT)やブラジル共産党(PCdoB)の議員たちとの関係も良好で、その観点からも、マイア氏の大統領代行を望む声があるという。
マイア氏自身は最近、そうした政局話に巻き込まれるのを避けるため、大統領府や大統領官邸にも積極的に寄り付かない上、大統領訴追問題などが話し合われるときには議会からも距離を置きたがっているという。