「日本で少し働けば車や家が買える」――そんな歌い文句に釣られ、日本語や文化、習慣などの知識もなく訪日し、苦労したデカセギは多い。
CIATE(国外就労者情報援護センター)の永井康之専務理事(41、愛知県)は、「ここに相談に来る四世もいるが、優秀な人は中々居ない」とこぼす。同センターが紹介する日本の仕事は肉体労働系が多いにも関わらず、日本語能力の条件には「日常会話が可能なレベル」が求められているのが普通だ。
永井専務理事の印象では、訪ねてくる四世のほとんどは「日語が全くできない」。日本語もでき、高い能力を持つ人材なら、日本からの進出企業で職が見つかる。普通はそんな人材なら、わざわざ日本で工場労働しようとは考えない。
最近の求人傾向については「地震の復興作業、五輪会場の建築現場などにも人が集められている」と説明した。ブラジル人や外国人の求人が日本で増えている理由には「日本の少子化や高齢者の増加による、労働者の減少」を上げた。
昨年1~6月、日本に入ったブラジル人は約3千人だそう。2008年のリーマンショック直後に激減して以来、初めて在日ブラジル人が増加した。数年、数十年単位で変動を繰り返す大きな日ブラジル際人流が、一つの分水嶺を超えた感じだ。
ただし、他国からの労働者も増加傾向にある。昨年末の在留外国人統計によれば、国別在留外国人数は中国人約70万人、韓国人約45万人、フィリピン人約20万4千人、ベトナム人は約20万人。
在日ブラジル人は約18万人で5番目。リーマンショックまでは3位だったのが、大きく順位を下げた。フィリピン人やベトナム人は技能実習生(一時滞在ビザ)であり、ブラジル人のように永住権を持つものは少ない。
四世向けの在留ビザ解禁に関して永井専務理事は、「生活のサポートなど受け入れ制度を整えるのであれば、労働者の募集をしても良いのでは」と考えている。
「両親が日本に住む18歳の四世がここに相談に来たこともあった。日本で生まれ育ち、日本に帰りたがっている人もいる。ブラジルに帰国した元デカセギが日系社会の一部を支えつつある」と条件付き賛成の理由をのべた。
たしかに東洋街の周辺や地方文協でも、リーマンショック以降の帰伯者、なかでも青年層がけっこういる。彼らが将来、コロニアの担い手になってくれるであれば、歓迎する向きはたしかに多い。(つづく、國分雪月記者)