サンパウロで数多くのファンを抱えていたストリート・ミュージシャンのウィリアン・リーさんが3日に、癌のため、46歳の若さで死去していたことがわかった。
サンパウロ市内ではいたるところにエレキギターとアンプを抱え、有名な曲を弾き語る人たちがいるが、ウィリアンさんはその中でも圧倒的に有名な存在で、市内中央部のセー広場やパウリスタ大通りといった有名スポットでもかなりの客足を止めていた。
とりわけ人気があったのは、本家顔負けのギター・テクニックだ。とりわけ有名なのはイギリスのロックバンド、ダイアー・ストレイツのギタリスト、マーク・ノップラーのギターの細かい音色まで完全にコピーした演奏スタイルだった。
人々はダイアー・ストレイツの代表曲にちなんで、そのプレーを「サンパウロの悲しきサルタン」と呼んでいた。その「悲しきサルタン」はウィリアンさん自身、最も得意とする曲で、この曲を演奏するためにテレビの人気バラエティ・ショーに呼ばれたこともある。また、他州まで演奏に行くことも多かった。
サンパウロ市内の楽器屋の店員だったウィリアンさんが街頭演奏をはじめたのは2013年と、比較的近年だったが、そのプロも真っ青のギターの腕前と、ギターに劣らぬ熱唱ぶりは人気を集めた。動画サイト「ユーチューブ」でウィリアン・リーの名で検索すれば無数の街頭演奏シーンが見られるが、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」やガンズ&ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」という一般的な人気曲になると、閲覧数は100万回を超えるものも珍しくない。書き込みのコメントもポルトガル語のみならず英語のものも多く、「これまで聴いたカバーの中で一番うまい」などの賛辞も少なくなかった。
また、ブラジル国内の有名ミュージシャンが、街頭演奏中に共演する光景も数多くあった。
そんなウィリアンさんだから、マスコミからも注目され、「エロイ・ダス・ルアス(ストリートのヒーロー)」の名で記事に取り上げられたことも少なくなかった。
癌が発覚した際には、治療費の捻出に多くのミュージシャンが乗り出した。中でも、現在世界的に人気のへヴィ・メタル・バンドにブラジル人ギタリストとして参加しているキコ・ロウレイロが、自身のギターをオークションで売って4500万ドルを寄付したことでも話題を呼んだが、その祈りもむなしく、ウィリアンさんは世を去った。
だが、死後数日を経てもウィリアンさんのフェイスブックには追悼コメントが絶えず、いつのまにか、ファン一同による追悼専門ページまで登場している。
遺族によると、ウィリアンさんの遺作「クラッシコス・ド・ロック VOL3」が近日中に発売されるという。(9日付フォーリャ紙サイトなどより)
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