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大耳小耳

 歌誌『椰子樹』373号が6月に刊行された。《君らここに命あずけて悔いなしと原始のみどりに視線をおくる》(多田邦治)はポルト・ヴェーリョのグァポレ移住地で読んだ作品。《ある夜は夢に出てきて亡母言うこの病む国に連れ来し悔いを》(高橋暎子)も政治混乱、経済不況の長引く現在だけに考えさせられる。《カーニバルには避妊具使えと恥じらいもなき広告のバス停にあり》(梅崎嘉明)も国民性の赤裸々さを詠ったもの。《息子と孫がみそ汁好むこの味も吾が一代のものの一つか》(寺田雪恵)も移民ならではの深い諦観が漂う。