前回のアバンセコーポレーションは日本側の大手派遣会社だったが、今回は当地側の大手「イチバン」に聞いてみた。
本社をパラナ州マリンガ市に構え、パラナ、ミナス、サンパウロ州と日本に支店を9つ持つ大手だ。なんと13チャンネルでテレビCMまで打っている。
デカセギ希望者への仕事の紹介、旅券の手続きや社会保険加入手続き方法の紹介などのほか、旅行用、二~三世のための各種日本在留ビザの発行手続きも行っている。
2月に有吉クレベル社長(35、三世)を取材すると、「2012、13年ごろは3~4支店だったが、14年以降急に増え始めた。日本側の募集、ブラジル側からの希望者が増えたためだ。その頃からテレビCMで宣伝している」と話し、「だから四世ビザの解禁については、会社として賛成だ」と率直に意見を述べた。
25歳で同社を継いで10年になるという。08年のリーマンショック以降、大量帰伯の時代となり多くの派遣会社が潰れたが、イチバンは逆に大きくなった。その秘密はなんだろうか。
長引くブラジルの不況により2014、15年からデカセギ希望者が増え始めという。「昨年12月だけで、なんと2千人の応募があった」そうだ。今年1月も約2千人と勢いは衰えない。
デカセギについて四世からの相談も増加した。「日本の景気にもよるが、3年後の東京五輪の影響もあり、現在はどこにでも職がある。1月も一つの工場から300人の求人がきた。五輪まではとても忙しくなると思う」と微笑んだ。
相談に来る人の中には四世も多く、ほとんどが18~30歳以下で大卒も多いという。有吉社長は四世について「日本語が喋れるのは10人中2人。みな『日本を知りたい』『ブラジルで働いたこともまだないが、日本で働いてみたい』『最新技術の国を見たい』と話す。他の世代のように稼ぐことが一番の目的ではない」という感触だ。
「やはり日本語に問題がある人が職場や生活環境に慣れず、最終的に帰国を希望する。クビになりやすく、職が見つかりにくい。紹介者として責任を取らなければならないので大変」とため息をついた。
「日本の職場側で受け入れ体制が改善されたところはたくさんあり、派遣会社も生活マニュアルを用意するなど、なるべく準備を整えている。だが労働者も自ら調べ、勉強するなどしてほしい」と悩みは尽きない。
「20年前のデカセギ全盛期は、日本で1年働けばブラジルで家や車が買えた。今は5年以上必要」と経済格差が縮小したという。さらに「5年後には円とレアルが同じ価値になり、ブラジルから働きに行く必要はなくなる。そうなればデカセギも減少するので今が頑張り時」と将来を見通した。本当にそんな時代が来るのだろうか。(つづく、國分雪月記者)