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《ブラジル》政界=テメルとマイアが下議の奪い合い=分裂危機のPSB不満分子巡り=告発逃れにPMDB増強か?=今や下院議長は脅威に

テメル大統領とマイア下院議長(Alan Santos/PR)

テメル大統領とマイア下院議長(Alan Santos/PR)

 党内分裂の危機にあるブラジル社会党(PSB)の下議を自身の所属政党に取り込もうとして、テメル大統領(民主運動党・PMDB)とロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)が争っていると、19日付現地紙が報じている。

 PSBは5月17日に起きたJBSショックを機に、テメル政権の連立与党を抜けた。また、与党が推し進める労働法改正や社会保障制度改革を巡っても、PSBは反対の立場を取っていた。
 だが、それはPSB全体の合意ではなかった。テメル氏の疑惑発覚で同党が連立離脱を決めた際も、36人の同党下議の中、16人は離脱に反対だった。また、同党上層部が党員に労働法改正と社会保障制度改革への反対を強要したことで、さらに不満が募っている。
 PSBの不満分子の一部は既にDEMに移籍する意向を固めているが、これを知ったテメル大統領は、17日にPSB下院リーダーのテレーザ・クリスチーナ氏らと会うことを決め、18日朝、テレーザ氏の公宅で同党下議計5人と朝食を共にした。テレーザ氏によると、大統領はこの席で、DEMへの移籍を取り止めてPMDBに来れば、農業界と関係のある下議たちが国税庁に申入れていた不満解消に協力すると言ったという。また、同党の不満分子には、PMDBのロメロ・ジュカー党首ら、複数政党が声をかけているという。
 テメル大統領は検察庁からの収賄容疑での告発を受け付けるか否かの下院の全体投票を8月に控えており、検察庁からのさらなる告発も予想されている。同氏としては、PSBの不満分子をPMDBに吸収し、告発反対を強化したいところだ。
 だが、この動きはマイア議長の機嫌を損ねた。同議長は既に、PSBの不満分子がDEMへの移籍を考えていると、大統領には報告していた。
 DEMは大型党だったが、多くの議員を社会民主党(PSD)に奪われ、現在の下議数は29人で8位。今回のPSBの不満分子取り込みは、長年の協力党でもある民主社会党(PSDB)の規模(46人)又はそれ以上の規模にまで議員数を増やす計画の一端だったからだ。連邦議員の党籍移動は来年の選挙での放送時間や資金の分配に影響するため、DEMなどの複数政党が、PSBの下議受け入れに積極的に動いていた。
 テメル大統領はマイア議長との間の不協和音拡大を防ぐため、18日の夜、複数の閣僚と共に同議長宅を訪れ、緊急会議を行った。マイア氏は議長就任当初からテメル氏に忠誠を誓っているが、テメル氏が停職に追い込まれた時は同議長が大統領職を代行することもあり、大統領への告発直後から周辺がマイア氏を持ち上げはじめ、テメル氏がそれを不服に感じていた経緯もあった。
 この会議の後、テメル氏は、19日に予定されていたペルナンブッコ州での都市省のイベント参加をキャンセルした。同州はPSBの票田で、PSB所属の知事は、連邦政府が同州に約束した支援をないがしろにしていると強く批判していた。