デカセギ子弟への支援活動を行なうNPO法人「カエルプロジェクト」(以下、カエル)のコーディネーター中川郷子さん(東京都、60)は、四世向けビザについて、「日本に生まれ育ち、18歳で一旦帰国して戻れなくなってしまった子がいることはかわいそうだと思う」と一言。「ただし、日本側の受入れ体制ができていないのに四世の人全てにビザを与えるのは疑問がある」と釘を刺す。
中川さんは1995年から、デカセギ問題に取り組みはじめ、2008年からブラジル三井物産基金の支援を得て「カエル」の活動を始めた。
在日ブラジル人学校への機材・教材支援、奨学金供与、副教材開発支援、子どもへの支援活動をする他団体への協力のほか、帰国子弟へのポ語授業、在日ブラジル人保護者への育児指導などを行なう。同プロジェクトのスタッフは中川さんを含め5人だ。
中川さんは「四世にビザを出すか否かとなると、将来的に『日系人とはなにか』という問題に発展する」と考えている。四世と言っても、日系人同志で結婚を繰り返す家庭、外見的に日系人の特徴がほとんど見られない四世もいる。
約20年、日本のデカセギ子弟の教育問題に携わっていたこともあり、「訪日就労者を増やすということには疑問がある」との立場だ。
日本の「義務教育」は、在日外国人子弟に対しては強制ではない。言葉や文化に適応できず不登校になってしまうケースもある。学校に籍を入れていない子どもは、国や教育委員会が行う調査に数字として表れず、中川さんは「調査から漏れている〃見えていない子〃がたくさんいるはず」と推測している。
幼少時に訪日し、義務教育を受けずに働き始め未成年で妊娠してしまう女性が増えている。「小学校に上がるときの問題は、家庭環境のせいだけといえるだろうか?」と疑問を投げかけた。
大きな外国人コミュニティーを持つ地域やその教育機関の多くで、子弟の教育問題、労働者の生活相談や援助のような「受入れ体制」が作られているが、実は「国がやっている受入れ体制はあまりない」と述べた。
「09~14年まで文部科学省の委託事業『虹の架け橋』が行われました。日語の問題がある外国人児童に3カ月日語を教え、日本の教育機関に通学させましたが、その後目立った活動はありません」とため息をついた。同事業終了後、「定住外国人の子どもの就学促進事業が実施されたが、予算は10分の1ほどに減額された」という。(つづく、國分雪月記者)