サンパウロ州北部リベイロン・プレット市近郊にあるグァタパラ農事文化体育協会(茂木常男会長)は16、17の両日、同文協敷地内で「移住地入植55周年祭」と「収穫祭」を開催した。ステージでの演目や食べ物・雑貨などの出店が並び、周辺地域の住民や観光客など多くの来場者で賑わった。
初日午前10時にはモンブカ墓地の「拓魂碑」前で先没者慰霊式典が開かれた。グァタパラ信徒会によるカトリック式の式典で約200人が参列した。神父よる説教と讃美歌の合唱の後、参列者が献花と焼香を行い、先人を弔った。
慰霊式典の後、会館に移動して『移住地入植55周年祭』と『収穫祭』に。来賓にはJICA伯事務所の斉藤顕生所長、ジュラシー・ダ・コスタ市長、日系三団体代表者、南米産業開発青年隊の渡辺進会長、主な入植者の出身地、茨城、山形、長野、岡山、島根、山口、佐賀の7県人会代表者が出席した。
式典では同文協の貢献者、日本語教師、80歳以上の長寿者らに表彰状及び記念品が贈呈された。謝辞を述べたグァタパラ日本語学校教師の上野真喜子さん(69)は20年以上も同地で教鞭をとる。「今では非日系の子供も多く通うようになった。ここで学んで日本に留学した子もいる」と誇らしげに話す。だが「20年前は100人いた生徒が今は半数。生徒はサンパウロ市の大学に進学して帰ってこないことが多い」とも。
ステージでは同地のバレーや空手教室の生徒が演目を披露し、タウバテ市の海藤三味線教室のメンバーが民謡を唄って盛り上げた。会場には40以上の出店が並び、特産のレンコンや加工してスナックにしたものなどが販売された。特に漬物が飛ぶように売れ、初日は午後2時に完売。金魚すくいやマッサージなどもあり、来場者は思い思いに楽しんだ。
毎年出るサンパウロ市からの県連バスツアーでは71人が来場。55周年の節目とあって県人会が参加を呼びかけたため、昨年の24人より大幅に増えた。4回目という菊地敏江さん(82)は、「ここの特産品が楽しみ。レンコンと手作りの味噌が美味しいの」と話した。
55年前にグァタパラに入植、今はサンパウロ市から毎年欠かさず同祭に参加する藤山節子さん(89、岡山)は「はじめは電気もなかった。主人は69年にアポロ11号が月面着陸したニュースを300キロ離れたバストスまで観にいった」と笑った。「私たちが開拓したのは再生林。戦前移民が密林を切り拓いたのと比べたら大変ではなかったわ」と振り返った。
同文協の茂木会長は「年々来場者が増えていて今年は特に多い。大半がブラジル人で日本食ブームもあって喜んで来る」と顔をほころばせた。
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55年目の節目とあって盛り上がりを見せたグァタパラの「移住地入植55周年祭」。そんな中、同文協の新田築さんは「55年の歴史の中で在サンパウロ総領事館関係者が出席しなかったのは、今回が始めて」とぼやいた。「会長の茂木が総領事館まで挨拶に行った。中前隆博元総領事は『自分が退任しても代わりの者が必ず行く』と言ってくれた」とのこと。来年こそは必ず誰か来る?