国際協力機構(JICA)ブラジル事務所(斉藤顕生所長)主催の「ビジネスネットワーキング」が24日、ジャパン・ハウス内のセミナールームで開催された。日系社会と日本の中小企業11社(調査団)が連携して、ビジネス案件の形成を目指すもの。来場者として各日系団体の代表者、当地の事業経営者などが参加した。調査団は自身の事業を紹介すると共に、来場者との関係構築やビジネス機会の創出を図った。
ブラジルへの調査団派遣は2013年に始まりは今回で5回目。サンパウロ州を含む4州を訪問し各地でセミナーの開催、日系企業などの視察、日系団体との協議を行なう。調査団の業種は農業、下水処理、食品、食品加工、医薬品、通信、ITなどがブラジルを訪れた。
JICA伯事務所の佐藤洋史次長は挨拶で「日系社会の持つネットワークを活用し、日本の技術・サービスの国際展開を進めていく」と連携の重要性を強調。「ブラジルの様々な面を見て事業展開をより具体的に考えてほしい」と話し、当地独自の留意点などの意見交換を促した。
調査団が各2分で企業説明を行ない、会場に用意されたブースに移動した。当地側の来場者は関心のある企業のブースで個別に話した。
調査団のアイシン共聴開発は日本とフィリピンで通信事業を展開する。同社の日髙正人代表取締役社長は、「国土の広いブラジルでどのように通信インフラ環境を整備しているのかに関心がある。自社技術がどう生かせるのか、しっかり把握したい」と話した。
救急薬品工業の宮川貴之さんは「日本からブラジルに進出する医薬品メーカーはまだ少数。自社製品が優位性を持てるかを探りたい」と参加目的を話した。当地政治経済が不安定なことについては「産業が確立してから参入したのでは遅い。他社が進出をためらっているときこそ狙い目」との考えを示した。
当地側の不動産開発会社社長のセルソ・テラダさん(43、三世)は「建設工事技術を提供する会社が魅力的。双方ともビジネスパートナーを探していて、今後協力できるかもしれない」と手応えを感じた様子。「話しきれなかったので、具体的なことはメールでやり取りする」と話した。
日系メーカーの現地社員、高木武さんは「経済が安定しないなか撤退した会社も多い。ブラジルで事業を継続するには忍耐がいる」と話す。高木さんの会社は07年に一度撤退する苦い経験を経て、12年に再進出した。「成功するためには何かの分野でパイオニアになり、市場での地位を確立することが重要」とし、当地での事業展開の難しさを示唆した。
派遣団は25日にリオ・グランデ・ド・スル州に到着し、その後、パラナ州、ミナス・ジェライス州を訪問。8月4日に帰国する。
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JICAによる「ビジネスネットワーキング」には来場者からの辛口な意見も。当地で15年間に渡ってコンサルティング業をする男性は「わざわざ日本から来てやるようなことではない」とばっさり。「市場調査であれば日本にいてもある程度できる。参加企業はブラジルのことを良くわからないまま、とりあえず来たような感じ。温度差を感じた」とのこと。調査団参加者によると、渡航費負担は一切なし。ただの「視察旅行」にならなければいいが。