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ブラジル議会に遠山の金さん?=大統領の名前を腕に刻み

大統領の名を刻んだ刺青の部分を叩いて大統領の潔白を主張するヴラジミール下院議員(Lula Marques/AGPT)

大統領の名を刻んだ刺青の部分を叩いて大統領の潔白を主張するヴラジミール下院議員(Lula Marques/AGPT)

 2日、ブラジルの下院では、テメル大統領への収賄疑惑での告発を受け付けるか否かの投票が行われた。下院が告発を受け付ければ、大統領は停職が決定的になる瀬戸際にあったが、そこでひとりの議員が立ちはだかった。
 その議員はヴラジミール・コスタ下議。歌手やテレビ司会者の肩書きを持つ同氏は、地元パラー州で、自身のニックネームを冠したバンド「ヴラッジ」のヴォーカリストとしても知られていた。
 そのヴラジミール氏は数日前、自身の肩から上腕部にかけて、ブラジル国旗とテメル大統領の名前「TEMER」を刺青して披露し、話題を呼んでいた。
 国の立法を司る連邦議員が刺青を入れるという行為は、刺青に寛容なブラジルでも異例のことだが、運動選手ばりに筋骨隆々のヴラジミール氏が、上半身裸と、黄色いタンクトップ姿の2種類に分けて、その刺青をマスコミに披露した姿は、ブラジルの新聞の一面を飾った。愛国心が強く、テメル大統領を信奉する彼としては、「大統領を助けたい」一心で行った行為でもあった。
 ヴラジミール氏は2日の下院でも、投票を行う前に「テメル擁護派」を代表して、最初に自身の見解を壇上で語る役目を務めた。
 壇上にあがったヴラジミール氏は、昨年罷免となったジウマ大統領が所属する労働者党(PT)の議員を中心にした野党の野次の集中砲火にあったが、身振り手振りも含め、全身を使って野党に反論し、「この無能の集団め」などと、激しく言い返した。
 タレント活動で鍛えたユーモア溢れる言動に、次第に野党側も笑いはじめ、そのうち「脱げ!」「タトゥー(刺青)を見せろ!」との声もあがりはじめた。
 テメル大統領が倫理観に溢れた人物であることを熱弁するヴラジミール氏は、服を脱ぐまではいかなかったものの、刺青を入れた箇所を指で指して、「私はここに入れた刺青の名にかけてここで誓っているんだ」と野党側に訴えた。
 ここで仮に、「黙れ、黙れ。この刺青が目に入らないというのか」とでも言って、右腕部分を見せれば、完全に日本で言うところの「遠山の金さん」になっていたところだが、とりあえずそれはお預けとなった。
 ただ、その刺青のご利益があったか、この日の投票でテメル大統領の告発は却下となった。
 検察庁は、テメル氏に対し、近日中にもう一件の告発を行う予定だ。もし仮に、これが今回以上に緊迫した大統領の危機となりでもしたら、議会での桜吹雪ならぬ「テメルの刺青」披露も起こりうるかもしれない。