この提言は今後10年、20年、日本と日系社会の関係を方向付けるもので、コロニア必読の内容といえそうだ――。「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」は日系人との連携推進を目的に、岸田外務大臣の下に設置され、3月6日に第1回会合を行った。メンバーは堀坂浩太郎上智大学名誉教授を座長に、山田啓二・海外日系人協会会長(全国知事会会長、京都府知事)、飯島彰己・三井物産会長(日本経済団体連合会副会長)、北岡伸一・独立行政法人国際協力機構理事長、柳田利夫・慶應義塾大学文学部教授、浅香幸枝・南山大学外国語学部准教授、ウラノ・エジソン・ヨシアキ筑波大学人文社会系准教授ら、自治体や経済界、学界、関連団体からの有識者委員が参加した。第2回会合は3月29日、第3回は4月17日に開かれ、5月9日に薗浦健太郎外務副大臣提出された。この文書は日本外務省より許可を得て同HPより転載した。
【はじめに】
中南米地域は、我が国と自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、環境への配慮等の基本的価値を共有し、国際社会の平和と繁栄のために共に貢献する重要なパートナーであるとともに、極めて親日的である。この親日感情の根底に、いまや推定210万人を超える世界最大の日系社会がある。
我が国の日系社会に対する政策は昭和30年(1955年)に設置された海外移住審議会の答申・意見に基づいて行われてきた。昭和60年(1985年)の答申では、日系人の活動支援は重要な課題であるとして、初めて日系人との協力が打ち出された。平成5年(1993年)の意見では、移住者支援の観点からは少なくとも概ね三世までを対象とすべき旨を述べるとともに、更に日系人を支援し、居住国における日本の理解者として育成していくことが日本と当該国との良好な二国間関係の促進に資するとの考えが示された。
平成12年(2000年)の海外移住審議会の最後の意見では以下の基本的考え方が示された。即ち、①日系人の活躍は我が国にとって有形無形の財産であり、日系人は日本との「懸け橋」、②日系人の間にある、日本語や日本文化を学びたい、日本におけるルーツを確認したい、日本との関わりを求めたい等の要望に応えることは、日系人社会の居住国への一層の貢献に役立つ、③我が国との関係は互恵的であるべきであり、「支援」から「協力」へと移行する意識が重要、④日系人社会の求めるところの変化に合わせた支援継続の必要性、⑤移住の歴史・日系人社会の現状についての正しい国民理解の促進の必要性、である。
また、この考え方を踏まえた具体的施策として「日系人の招へいや研修」、「日系社会による日本語、日本文化普及への協力」、「日系人材の活用・雇用」、「県人会を通じた交流、海外日系人大会」等が提言された。これが今日の「日本と海外日系社会の在り方」の一つの基礎となっている。
平成12年(2000年)の海外移住審議会の意見後17年が経過し、この間、中南米地域の日系社会では世代交代が進み、更に現地社会と融合し、様々な分野で大きな影響力を持つ日系人が多数活躍するようになり日系人としての意識にも変化が現れつつある。最も新しい世代として日系六世の存在が報告された国もある。
さらに、日系社会やその活動に参画する非日系人も増え、また、国境を越えるネットワークも拡がりを見せている。このような中、安倍総理は中南米地域を訪問する際には、各国の日系社会と交流し、絆を深めてきた。(つづく)