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中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなるの?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(2)

2014年8月2日、来伯した安倍総理は日系社会代表者と懇談した

2014年8月2日、来伯した安倍総理は日系社会代表者と懇談した

 平成26年(2014)年、安倍総理はサンパウロにおいて日系人が現地で築いた信頼に賛辞を呈するとともに、日系人が誇りを持てる日本をつくり、日本と日系社会、若いリーダー達との絆を強化すると述べた。
 また、平成28年(2016)11月にアルゼンチンを訪問した際には、あらためて、架け橋となってくれている日系社会のおかげで日本と中南米がjuntos=together(一緒)でいられるとも述べている(注)。
 こうした経緯を踏まえて、岸田外務大臣が立ち上げた各界を代表する有識者からなるこの懇談会が中南米地域の日系社会との連携強化に向けて報告を行うこととなった。有識者懇談会は、現在の日本と中南米日系社会との関係を調査し、現在の変化を踏まえて今後の連携のあり方について議論を行った。
 以下、現在の中南米日系社会の現状、日本との交流の状況を明らかにした上で、中南米日系社会との連携に関する基本的な考え方、考慮すべき点及び連携強化に向けた今後の具体的対応策を提言する。
(注)日本の中南米外交における、安倍総理の「三つの理念」:発展を共に、主導力を共に、啓発を共に。

 

 

【1】中南米日系社会の現状

 

 本有識者懇談会の議論の参考とすべく、外務省は中南米23か国に開設されている日本国大使館、総領事館、領事事務所計33公館を対象に中南米日系社会の現状に関する調査を行った。日系社会の規模を正確に把握するのは困難であるが、在外公館からの報告を集計すると210万人余りであった。
 中南米の日系社会においては、二世から三世、四世、五世へと世代は移りつつあり、活動の中心世代も新しい世代に移行している。世代交代にともない活動を休止・廃止する日系団体も出て来ており、邦字紙等伝統的な媒体には、様々な課題に直面しているものも見られる。
 他方、文化団体・スポーツ団体の活動は拡がり、各地の日本祭りをはじめとするイベントも年々盛大になっているところも少なくない。
 また、日本への関心の希薄な、日系団体に参加していない日系人や若い世代の日系人であっても日本に関する情報や体験機会を得られれば、自らのルーツへの意識や日本への関心が高まることが把握されている。
 一方、日系人の訪日への関心は高く、その目的は留学、研修、観光、就労を含め多様化している。
 このような日系社会における世代の移行に鑑みると、現在は、中南米日系社会と日本との将来にわたる連携のための取組を進める上で極めて重要な時期にある。海外移住審議会が移住の延長線上で日系人・日系社会を捉えてきたのに対し、今回の有識者懇談会では、日系人・日系社会を主題として捉え、「協力」からさらに一歩進めて「連携」に比重を移している。
 民間の日本語学校については、日系団体が設立した学校がかなり広範囲に存在するが、近年、日系の生徒や教員が多数でない場合も多くなっている。
 日系諸団体(文化団体、福祉団体、スポーツ団体等)についても、非日系人の参加が見られる。非日系の配偶者や家族だけでなく、地域の非日系住民が参加するケースもあり、日系社会の外縁は確実に拡大している。
 さらに、パンアメリカン日系大会や日系体育大会、また青少年育成プログラムや若手日系企業家のグループ等居住国の国境を越えた日系ネットワークの形成・活動も見られる。
 また、多くの日系社会は現地社会と一層融合しているほか、様々な分野で極めて大きな影響力を持つ日系人が多数存在し、中には全く日系社会と関わりを持たず活躍される方々が多く存在している。(つづく)