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中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなるの?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(3)

2014年8月2日、文協大講堂でコロニアにむけて想いを語った安倍総理

2014年8月2日、文協大講堂でコロニアにむけて想いを語った安倍総理

 もっとも、進出日本企業と日系社会との関係は、多くの日系人が雇用されてはいるものの、未だ部分的なものに留まり、必ずしも緊密であるといえる状況にはない。
 しかし、駐在員やその子弟の中には、現地に深く根をおろし「新日系人」として架け橋となる人も出始めている。
 日系社会の存在により日本と中南米各国との間では、外交関係樹立に加え、移住開始年、県人会その他日系諸団体の設立年等多様なレベルでの周年記念事業が両国関係強化の契機となっている。
 各公館が把握した平成29年(2017年)の中南米における日系社会主要行事は200件以上に上り、延べ参加者数は200万人以上に達すると見込まれている。行事のカテゴリーも日本祭りをはじめ、スポーツや慰霊行事等多岐にわたる。この中には、国境を越えて日系人同士が交流するようなものや、SNSを通じた頻繁な交流も含まれており、若い世代の新しいネットワークが着実に拡がりを見せている。
 これらの行事やその他の日系社会の活動・事業は、①日本の様々な活動主体・年齢層が中南米の日系社会と連携して、中南米社会に訴求する機会を提供するものであり、②日本と日系社会が多層的で互いに想い合う関係を発展させる重要な契機となるものと考える。
【2】中南米日系社会との連携に関する基本的な考え方

 (1)基本理念

《ア》安倍総理は平成26年(2014年)に中南米を訪問した際、中南米日系社会との連携に関する3点の基本的な考え方を明らかにしている。
 ①中南米の日系社会は中南米地域の日本に対する信頼の基礎であり、今後とも、日系社会が築いた信頼を継承し発展させる、②中南米の未来を担う若い日系社会のリーダー達との絆を強化する、③日系人が誇りを持てる日本をつくる取組を通じ、絆を強化する、の3点である。これらの考えを指標として、中南米日系社会と我が国との連携を強化していくことが重要である。
《イ》今後、日系社会の世代が下る中でも、新しい世代の日系人が自らのルーツや日本への関心を持ち、中南米で日系社会が獲得してきた信頼感を担っていくよう、手を携えていくべきである。
 また、日系社会が各国で主体的に展開する事業・行事・ネットワークと連携することを通じ、日本に対する彼らの期待に応えると同時に、共に中南米各国社会に訴求し、日本を発信することを目指すべきである。それは日本各地の国際化にも寄与する。そして日本と中南米が共に発展することに貢献する。
《ウ》日本の政府・関係機関、地方公共団体、経済界、学界、関連諸団体、市民団体等様々な主体が、中南米日系社会と多層的な関係を織りなしていくことを念頭に、事業内容に応じた大小の拠点づくり、それらを結びつけるネットワーク化、そして多様な主体が出会うマッチングといった取組を推し進めるべきである。(つづく)