ブラジル初生産となる家庭用電子血圧計がついに登場―。オムロンヘルスケア株式会社(本社=京都府向日市、荻野勲代表取締役社長)は15日、サンパウロ市内イベント会場にて記者会見を行い、従来輸入していた主力製品・電子血圧計の現地生産を開始したと発表した。『Omron Conectado em Voce(オムロンはあなたと繋がっている)』を掲げて企業イメージの刷新を図り、消費者に直接うったえる宣伝活動を本格的に開始した。
当地で生活していれば、身の回りには脳溢血、心筋梗塞の話があふれている。事実、ブラジル保健省によれば、毎年約30万人が高血圧を起因とする疾患で死亡している。ブラジル高血圧症協会によれば、高血圧症の患者はおよそ3800万人にのぼり、うちの77%はモニタリングを含む適切な治療を行っていない現状があるという。
そんな中で、生活習慣病の予防や改善、呼吸器疾患の吸入治療分野における成長を事業戦略に掲げ、新興国事業の拡大に力を入れてきたオムロン。03年頃から代理店を通じた販売を開始し、08年に営業拠点を設立。12年には地域本社を構え、本格的な事業展開を開始した。
14年には、ネブライザー(吸入器)生産販売大手「NS Industria de Aparelhos Medicos Ltda」を買収。その工場内に今回、500万レアルを投じて血圧計用生産ラインを新設した。
オムロンヘルスケアブラジルの福田鑑介取締役によれば、「輸入には船便で90日間要することに加え、複雑な税関手続きや輸入関税等の障壁がある。コストはさほど変わらないが、現地生産に切替ることでタイムリーかつ安定的供給が可能になる」と意義を語る。
電子血圧計の初年度年間生産目標は70万台、19年までに170万台を目指す。近隣の南米諸国への輸出も視野に入れている。
現在、血圧計は61%、上腕式血圧計では85%の圧倒的な国内シェアを誇る。福田取締役は「血圧計は医療現場のみならず、学術研究でも測定機器として使用され、精度への高い信頼性がある。生販一貫体制を敷いているのも弊社だけ」と先駆企業としての自信を伺わせる。
そのほか、世界最大規模というネブライザーでもブラジル国内で62%のシェアを占めるほか、体温計や体重計等も当地で販売しているという。
18年からは、血圧測定及び管理からリスクを可視化し、最適な治療に繋げることで、心筋梗塞や脳卒中等を防ぐことを目的とした企画も予定している。血圧管理の意義やその方法を啓発することにより、ブラジル人の健康増進にさらに貢献してゆく意気込みだ。
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これまでは病院の医師らを中心に、提案営業を行ってきたオムロン。目標としていた市場シェア獲得を達成したため、消費者に向けたキャンペーンに宣伝戦略を移行させたという。当日発表された会社の新イメージとともに、今後様々な情報媒体を通じて、消費者へ広く情報発信を行っていくという。ちなみに同社の電子血圧計は、スマートフォンとも連動し、測定したデータをグラフや数値で管理してゆくことが可能とか。係りつけの医師とも共有すれば、健康管理に大きく役立つかも。