岡田一義(かずよし)範士八段(75)と井上史朗(しろう)教士七段(52)が三重県剣道連盟より派遣され、今月19日から24日までブラジル三重県人文化援護協会剣道部(木村武たけし部長)で合同練習を行なう。かねてから同剣道部と三重県は剣道を通じた交流プログラムの創設を検討して、今回がその第一回目となる。
20日午後1時、練習を終えて横一列に正座した部員に向けて、岡田八段は、「いつも100%の力で練習に取り組む人が成長する。50%の人と比べて、ゆくゆくは大きな差がでる」との言葉を送った。練習は朝9時に始まり、部員らは疲れを見せていたにも関わらず、背筋を正しながら岡田八段の話を聞いた。
同剣道部は故竹内憲一さんが、当時の県人会長に働きかけ1992年に創設し、現在は約60人の部員を擁する。憲一さんの妻で同会顧問の竹内大恵子(たえこ、70)さんは、「普段私が指導するときより真剣に話しを聞いていたみたいね」と笑う。
13年に初めて高段者が来伯指導し、今回の合同練習に繋がった。竹内さんは「日本の高段者から直に指導を受けるのは本当に貴重な機会。可能であれば今後も続けたい」と話した。
岡田八段は「皆基礎がしっかりしている。日ごろから正しく習っているのがわかる」と評価。一方で「まだ技術は充分でない。ブラジルは剣道の競技人口が少なく、指導者の層も薄い。今後もこういった機会があるといい」と述べた。井上七段は「『習いたい。強くなりたい』という熱意が言葉は分からずとも目を見たら伝わってきた」と感心した様子で話した。
練習に参加した東出壮磨さん(13)は「最後の方は腕が上がらなくなってしんどかった。来週、昇段試験があるから、自分の完璧でないところを調整できた」と話した。
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三重県人文化援護協会の剣道部を指導した岡田八段は、「剣道の本来の目的は『人間形成』。それと比べたら『ブラジルで1番になる』というのは小さい」とピシリ、剣だけでなく言葉の使い方も切っ先鋭い。「厳しい訓練の末に、人間として必要なものを学んでいく。皆には将来、剣道で学んだことを仕事や社会で生かせるようになって欲しい」。息子の練習を見に来ていた駐在員男性は「気合や礼儀を身につけて欲しいを思い、習うことを勧めた」と話した。先月1日、ジャパン・ハウスで剣道のイベントが開催され、多くのブラジル人の関心を惹いた。日本精神を伝える文化として当地でも広く浸透して欲しいもの。