サンパウロ市中央部で21日午後、軍警が7歳の息子の前で元妻を殺した後、子供を連れて逃げたが、警察に自首するという事件が起きた。同日は同市南部や北部でも男性が伴侶を殺す事件が起きており、20日朝からの2日間で女性4人が現在または元の伴侶に殺された事になると22日付現地紙サイトが報じた。
サンパウロ市中央部での事件は21日の午後2時頃、ボン・レチロ地区のブラジル大通りで起きた。犠牲者のセリーナ・モウラ・マスカレニャ・ガマさんは、元夫で軍警のマウリシオ・デ・オリヴェイラ・ガマ容疑者(47)と口論となり、頭を撃たれ、現場で亡くなった。
マウリシオ容疑者は7歳の息子を連れて逃げたが、約2時間後に、子供をアパートの管理人に託した上で自首し、警官だけを収容する刑務所に移送された。
サンパウロ市南部での事件は午後4時頃、ジャルジン・アンジェラ区で発生。こちらも路上での口論後の事件で、ジャイルソン・フェレイラ・デ・ソウザ容疑者が内縁の妻のシリア・シウヴァ・ソウザさんを絞殺した。同容疑者は逃走したが、同容疑者の父親が市警備隊に電話で通報。現場には救急車が急行したが、シリアさんは既に死亡していた。
警察によると、ジャイルソン容疑者はシリアさん殺害後、彼女との間の子供を地域内の軍警基地に連れて行ったが、すぐに逃亡。数時間後に捕まり、警察に連行された。
21日に起きた事件の3件目は、同市北部のヴィラ・ブラジランジアの自宅で、アントニオ・デ・ソウザ容疑者(62)が妻のマリア・ド・カルモ・カンジドさん(67)に暴行を加えて殺害したものだ。同件は、酔っ払った同容疑者が近所のバールで「妻を殺した」と話すのを聞いた客が警察に通報し、明らかになった。同容疑者は駆けつけた警察の前で犯行を認め、自宅に案内したが、妻はもう息絶えていた。
20日の事件は、サンパウロ州議会付のクリスチアン・ランフレジ警部(42)が市西部の自宅で、フランコ・ダ・ロッシャ労働裁判所判事で妻のクラウジア・ゼラチさんを射殺した後に自殺したものだ。
サンパウロ州ではこの1~6月に272人の女性が殺害されたが、3分の1にあたる93人は、夫や恋人といった現・元伴侶に殺害されたという。サンパウロ州全体の殺人事件の犠牲者は83・7%が男性だが、夫婦間での殺人事件の場合は女性が犠牲になる場合が70・1%に上る。
グローボ局が直近の3カ月間について調べたところ、サンパウロ大都市圏ではサンパウロ市での11人を含む、少なくとも19人の女性が殺された。その原因は、嫉妬や浮気、子供の養育権を巡る抗争、望んでいない妊娠、離婚や関係破綻を受け入れられないといった例が大半だった。中には、妻をたぶらかして、夫婦の仲を裂こうとしているという理由で、妻の友人(女性)2人を殺害した例もあった。
司法関係者は、女性が犠牲となる殺人事件の大半は、ブラジルの社会や文化に根付いた男性至上主義が招いたものとしている。