《ア》中南米で日系社会が築いてきた評価やその存在感を、今後の世代に引き継いでいくための施策
(ア)中南米各地の日系団体の持続的発展を引き続き支援することが重要である。
例えば、我が国の地方公共団体が、日系団体の若手リーダー育成事業への支援や周年事業への参加等を通じて、中南米の県人会その他の日系諸団体の活性化と発展を図ることは引き続き中核的な取組の一つであるといえる。
県費留学や研修制度、中小企業の進出支援、中南米日系社会と我が国地方公共団体の連携を強化する事業や、国際協力機構(JICA)が行う日系団体をカウンターパートとする事業、日系人にJICAボランティアとして活躍してもらうこと等は、日系団体の持続的発展に有効であると考えられる。
日系団体の財政基盤を安定させるために各国の日系団体の参考事例をとりまとめる作業も有益である。
また、海外県人会と地方公共団体との連携を高めるとともに、海外日系人協会の役割を見直し、強化していくことも必要であろう。
(イ)たいへんな努力を経て中南米各地で評価を勝ち得るに至った世代の足跡を散逸させず,次世代に引き継いでいくため、JICA横浜海外移住資料館をはじめ、日本や各国・各地にある移住資料館等拠点の整備・運営、相互のネットワーク化の支援を強化し、また、国内外での巡回展示・講演等を支援することは今日求められる取組といえる。
また、叙勲や各種表彰制度等を通じて、先駆者の功績を積極的に顕彰することも重要であろう。
《イ》新しい世代の日本や日系ネットワークへの関心を育むための施策
(ア)日本への留学機会、研修や招へい事業の拡充、SNSを含めた母国語による発信の拡充等を通じて、中南米日系社会の新世代が日本に触れ、日本への関心と意識を喚起する機会を積極的に拡充すると共に、スポーツや教育面における交流や様々なコンテンツのPRなどを通じた新世代相互のネットワークと連携すべきである。そうした取組と併せ、新世代が日本語を学び、継承する機会を充実させていくべきであろう。
各論としては、中南米各国との政府当局間の留学協定・枠組みの整備や、地方公共団体レベルや大学レベルでの連携の強化、JICAの次世代育成研修をはじめとする次の世代の日系人向けのプログラムの実施、国策として移住した日系農業者等の若い世代に対する専門家による研修や日本への招へいを通じた農業・食品分野の交流、また、中南米地域における高校・大学・専門学校レベルでの日本留学支援の充実が望まれる。
在外教育施設と現地校との生徒間や教員間の交流を行うことは有意義である。
さらに、スペイン、ドイツ、イタリアといった諸国については、二重国籍の容認など我が国と比較してより柔軟な国籍制度が若い世代の頻繁な往来やルーツ意識の喚起に貢献しているとの指摘がある。(つづく)