ブラジルのミシェル・テメル大統領は22日、首都ブラジリアで開かれた第28回ブラジル鉄鋼業界会議に参加し、「社会保障制度改革を諦めない」と発言したと、同日付ニュースサイトG1が報じた。
政府は昨年のうちに同法案を議会に送付したが、未だに議会を通過していない。
下院の特別委員会では承認されたが、その後に起きた5月17日のJBSショックで政界が大混乱に陥り、テメル大統領の求心力も大きく低下したことで、同法案は足踏み状態になっている。
同法案は、憲法改正が必要な内容も含まれているため、下院で定数の60%以上の賛成を2回、上院でも同じ条件で2回の承認が必要だ。現時点では、下院での第1回目の採決の日取りさえ決まっていない。
テメル大統領に忠実なロドリゴ・マイア下院議長も、「現在はまだ、法案通過に必要な支持を固められていない」と見ている。
テメル大統領は、「社会保障制度改革を諦めない。私は各議員たちに、「今危機にあるブラジル財政を救えるのは自分たちなのだ、自分たちの責任でこれをやり遂げなくてはならないのだ」という意識を強く持ってもらいたい。社会保障関連の赤字額を見て、なお、手をこまねいている事は出来ない。このままでは赤字はドンドン膨らんでいく」と語った。
大統領は、「これは国民を思ってこその改革であり、一時的な人気取りの政策ではない。むしろ、一時的な人気は酷く悪いものだという事も承知している。今日これを行うと、明日は辛いことになるかもしれない、しかし、明後日振り返ってみれば、やってよかったと評価される政策だ」とし、社会保障制度改革の年内成立を目指すことを強調した。
同大統領は、企業関係者である会議の出席者たちにも、「議員ではない皆さんにも、これを理解し、この計画に参加してもらいたい。ブラジルの将来を作るのは今の我々だ。家に帰って、家族の会話で、『社会保障制度改革は大事なんだ。将来のための一時の苦い薬なんだ』と話して欲しい」と呼びかけた。
しかし、下院に存在する複数政党会派のセントロンは、連立与党でありながら、社会保障制度改革には反対の立場をとっている。
また、連立与党の中でも、法案の内容、採決を行うのに有利なタイミングなどの意見がなかなか一本化されていないのが状況だ。
マルセロ・カエターノ財務省社会保障局長は、「もし年金改革が成立しなければ、政府は大増税など、より痛みを伴う措置をとらなくてはならなくなる」としている。