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《ブラジル》教師への暴行ランク1位=恥ずべき教育現場の実態は?

 22、23日のブラジル国内紙やサイトに、顔面から血を流している女性の写真が掲載された。この写真はブラジル南部のサンタカタリーナ州で教鞭を取る女性教師のマルシア・フリッジが、15歳の生徒から暴行を受けた直後の写真だ。
 だが、この事件は教師への暴力行為のほんの一例で、国内メディアが報ずる出来事も氷山の一角に過ぎない事を示すデータが発表された。
 それは、2015年にサンパウロ州の公立校教師組合が行った調査の結果で、同州では、何らかの形の暴力行為の被害に遭った事がある教師が44%、暴力行為の現場に居合わせた事があるという教師は84%もいた。
 学校内での暴力行為や青少年の暴力行為に関する専門家は、この調査は教師だけに尋ねており、暴力行為が学校教育や校内の日常、習得度などに与える影響に触れていないから不十分だという。
 だが、教師らが挙げた暴力行為が、言葉による暴力74%、いじめ60%、破壊行為53%、肉体的暴行52%との内容は、教師達の日常の一部を如実に示している。
 他方、国際経済開発機構(OECD)が2013年に34の国や地域で行った、11~16歳の子供の教育に携わる教師達10万人以上に対する調査では、ブラジルは教師への暴力行為が世界一多い国である事が明らかになったという。
 同調査では、1週間の間に最低1回は言葉による暴力や脅迫を受けた事があるかという質問に、「ある」と答えた教師の割合を比べている。
 この質問に「ある」と答えた教師の割合の平均は3・4%だったが、ブラジルでは12・5%の教師が「ある」と答えたという。以下、エストニアの11%、オーストラリアの9・7%が続く。韓国やマレーシア、ルーマニアでは0%だった。
 サンパウロのカトリック総合大学教授のロゼメイレ・デ・オリヴェイラ氏は、ブラジルで教師への暴力行為が多いのは、暴力行為に走った生徒や学生への懲罰が徹底していないからだと言う。ブラジルの場合、転校処分や8日間程度の登校禁止措置がとられる事はあるが、退学処分や留年となり、進級や卒業が出来ないといった、厳しい措置がとられる事は少ない。
 しかし、被害に遭った教師達が心や体の傷を乗り越えるのは、決して簡単ではない。銃で撃たれる、殴られる、脅迫されるなど、極度のストレスを伴う被害を受けた教師には、教壇に立てなくなり、精神科の治療を受けたり、事務や図書館の仕事などに配置換えになったりする例も多いが、その場合は、仲間からの偏見や孤立化という被害にも遭い易くなる。
 一方、2002年にユネスコの調査に加わったミリアン・アバラモヴァイ氏は、学校内の暴力は常に複数形で考える必要があるという。
 同氏によると、暴力行為に走る生徒達は自分の居場所を見出す事が出来ず、活動に参加する事が出来ないため、反抗的になったり、暴力的になったりしがちだという。同氏は、生徒が暴力行為に走りやすい状況の一つは教室から出るように言われた時だと指摘する。
 専門家の一人は、現代の子供達は限度というものを知らず、親から「ダメ!」と言われる事もない、やりたい事は何でもやらせてもらえるという環境で育った「ガラスの世代」で、「皇帝シンドローム」というべき世界の中にいると評価する。この世界にいると、周りは全て自分に従い、自分の欲求を認めるべきと考え、自分の思い通りにならないと腹を立て、忍耐する事も出来ないから、暴力行為に走りやすくなるという。(22日付G1サイトより)