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中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなるの?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(7)

ブラジル日系社会を代表するイベントに育った県連日本祭り

ブラジル日系社会を代表するイベントに育った県連日本祭り

 (2)中南米日系社会とのオールジャパンの連携のための施策

 中南米日系社会との連携に向けて、政府・政府関係機関、地方公共団体、経済界、学界などオールジャパンの取組となることが期待されている。その際、日系社会や非日系知日派・親日派まで視野に入れた取組を進めるべきである。
 また、日本の魅力の発信と共に日本語教育のより一層の拡充を図るべきである。

 《ア》総論

 (ア)日系社会諸団体・ネットワークが中南米において展開する、日本語・和食・日本文化・武道等スポーツ・日本式教育や日本的経営手法の普及、或いは医療・福祉といった分野での事業や、日本祭りや周年事業をはじめとする諸行事に、日本の各界各層が日系社会と一緒にそれぞれ持つコンテンツやリソースを提供して参画することは重要である。
 それを通じて、事業・行事の成功に寄与するとともに、中南米各国社会・国民に対して効果的に発信し、訴求し、友好関係のさらなる進展をはかる。
(注)こうした事業・行事は、地方の日系団体において大きな意義と効果が期待され、また、従来の日系諸団体に必ずしも参加しない若い世代の日系人に対する発信と関心喚起の面でも有意義である。
(注)平成29年(2017年)には中南米地域で206件の日系社会関連行事が予定されている。「日本祭り」が42%を占め、スポーツ系行事が9%。また、参加者1万人を超える行事は年間46件に上る。
 (イ)将来の中南米日系社会との連携増進を図るに当たっては、その対象を、世代を重ねる移住者の子孫たる日系人に限ることなく、様々な形で定住者となっている新世代やその子孫、長期にわたり日本での生活を経験して母国に戻った日系人、また今日の日系社会の活動や事業に参画する知日派・親日派も含めて取り組むことが適当である。
 中南米諸国民への日本語学習や日本文化体験の機会の提供や、愛好家向けのクールジャパン関連のイベント等を、日系ネットワークの集客力ある事業や行事と共催することもできる。パンアメリカン日系大会でも、日系二世や三世が非日系の知人・友人を伴って参加し、日本文化に親しむ窓口となっている。
 これら日系団体が実施する事業の中で、特に発信力のある啓発事業に日本から関係者が出席することは理解促進とともに事業の広報効果を高めることにつながる。学界の国際的共同研究の場でも、活躍著しい日系人研究者と組む機会もある。
 (ウ)中南米における各分野の日系高度人材やオピニオンリーダー、知日派・親日派を戦略的に発掘し育成することも重要である。例えば、在外公館を通じて各分野における日本留学・研修人材を同窓会組織等を活用し引き続き支援する。
 また、オピニオンリーダーの発掘・育成のための専門部会や異業種交流会の設置、日本側の関係団体や企業等との交流を通じ、地方公共団体との連携や、経済界、教育機関等による日系人材の積極的な活用を進めていくべきである。
 さらに、高度人材育成のため、留学生・研修生の受入拡大や、有力大学への日本語教育・日本研究の寄付講座の開設や交換留学等を含む中南米各国の高等教育機関等との連携も有意義である。
 各国の日系人数やどのような分野で日系人材が活躍しているか等について継続的に調査を行うこと、現地日系社会にあまり関与していない日系人材の発掘は、それ自体日系人との連携を深め、新たな施策立案に資する。
 (エ)海外日系人協会が主催し、毎年開催される海外日系人大会は、中南米を中心とする海外日系社会の意見や要望を集め、日本と海外日系社会との連携のあり方を議論する重要な機会である。新しい世代の意見も取り入れて海外日系人大会の議論を深化させ、具体的な連携につなげていくことが重要である。そのためには大会使用言語の多言語化、新世代の参加増進が一層望まれる。(つづく)